「少年再犯率が最悪」は「再犯者率」と取違え

2013年2月27日誤報レポートメディア:ジャンル:

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【NHK】 2013/2/22 「刑法犯の少年の再犯率 最悪に」
NHKは、警察庁の統計発表に基づき、2012年の「非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率」が33.9%だったと報じた。しかし、正しくは「刑法犯少年全体に占める再犯者の割合の再犯者率」であり、「再犯率」ではなかった。


 NHKは、2013年2月22日、ニュースサイトで、警察庁の統計発表に基づき、「非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率」が33.9%と過去最高であったと報じた。そのうえで、警察庁が「悪質な非行を繰り返す少年が増える」傾向があるとみていると指摘した。

 しかし、33.9%との数値は「刑法犯少年全体に占める再犯者の割合の再犯者率」であり、「非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率」ではなかった。

 NHKは、2月27日現在、訂正を出していない。


original

『刑法犯の少年の再犯率 最悪に』


 去年1年間に盗みや傷害などの刑法犯罪で検挙された少年は6万5000人余りで、9年連続で減りましたが、非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率はおよそ34%と、これまでで最も高くなりました。
 警察庁によりますと、去年1年間に刑法犯罪で検挙された20歳未満の少年は6万5448人で、前の年より1万2000人余り、率にして16%減り、9年連続で減少しました。
 減少の幅が最も大きいのが万引きやひったくりなどの窃盗犯で、3万8370人と前の年より9000人余り減りました。
 その一方で、去年10月にJR大阪駅近くで路上生活をしていた男性を殺害したとして16歳と17歳の少年4人が逮捕されるなど、殺人や強盗などの凶悪犯は51人増えて836人だったほか、去年4月に東京・八王子市で停車中のバスの運転手を刃物で刺してけがをさせたとして14歳の中学生が逮捕されるなど、傷害などの粗暴犯も419人増えて7695人となりました。
 また、非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率は33.9%と、統計が残る昭和47年以降、最も高くなりました。
 警察庁は新たに非行に走る少年が減る一方で悪質な非行を繰り返す少年が増えるという、二極化の傾向が出ているとみて、取締りとともに非行からの立ち直りの支援などをさらに強化したいとしています。
(NHKオンライン NHK NEWS WEB 2013/02/22 04:03)

 
刑法犯の少年の再犯率 最悪に(NHK NEWS WEB 2013/02/22 04:03)※2013年2月27日18:00掲載確認済み

NHK 2013年2月22日付

NHKオンライン NHK NEWS WEB 2013/02/22 (1:27~)


evidence

  1. 「33.9%」は「非行歴がある少年が再び検挙される割合」の「再犯率」ではなく、「刑法犯少年全体に占める再犯者の割合」の「再犯者率」である


 原報道は、警察庁の統計を引用する形で、昨年(2012年)1年間の「非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率」が「およそ34%」ないし「33.9%」で、統計が残る昭和47年以降、最も高くなったと伝えている。

 原報道は、前日の2月21日、警察庁が発表した資料「少年非行情勢(平成24年1月~12月)」を引用したとみられる。(1) この資料によると、「再犯者率は15年連続で増加して33.9%となり、統計のある昭和47年以降では最も高い」とされている。他方、資料には「非行歴がある少年が再び検挙される割合」を示す「再犯率」について言及された箇所はなく、統計も記載されていない。「再犯者率」以外に「15年連続で増加」し、「33.9%」となった「昭和47年以降では最も高い」数値もない。よって、原報道が「33.9%で、統計が残る昭和47年以降、最も高くなった」と報じた部分は、警察庁が発表した「再犯者率」を引用したものとみて間違いない。

 しかし、警察庁が発表した「再犯者率」とは、単年度ごとの「刑法犯少年全体に占める再犯者の割合」を示す指標であり、原報道のいう「非行歴がある少年が再び検挙される割合」の「再犯率」とは異なるものである。(2) (i) (ii)

 したがって、原報道は、2012年の「刑法犯少年全体に占める再犯者の割合の再犯者率」が33.9%だったと報じるべきところ、「非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率」と報じたのは、明らかな引用の誤りである。

警察庁生活安全局少年課「少年非行情勢(平成24年1~12月)」6頁

警察庁生活安全局少年課「少年非行情勢(平成24年1~12月)6頁

 

 

〔参考〕 警察庁の統計から「悪質な非行を繰り返す少年が増える」傾向があるとは必ずしも言えない


 原報道は、「警察庁は、新たに非行に走る少年が減る一方で、悪質な非行を繰り返す少年が増えるという、二極化の傾向が出ているとみて」いると指摘している。(iii)

 このうち「悪質な非行を繰り返す少年が増える」という部分は、文脈上、殺人や強盗などの凶悪犯と傷害などの粗暴犯が対前年比で増えたことと、再犯者率が過去最高になったことを根拠にして、統計に対する解釈・評価もしくは将来の事実に関する見解を述べたものとみられる。そのため、それ自体は事実誤認かどうかを問うことはできない。しかし、「再犯率が過去最高」という誤った事実認識とあいまって、「悪質な非行を繰り返す少年が増える」という評価・見解が合理的な根拠に基づいているとの誤解を与えた可能性が高い。

 まず、警察庁の統計から「増える」傾向があると言えるのは、前述のとおり「非行歴がある少年が再び検挙される割合」(再犯率)ではなく、「刑法犯少年全体に占める再犯者の割合」(再犯者率)である。

 確かに「再犯者率」は、近年上昇傾向にあるが、再犯者の「実数」でみると、過去9年間でむしろ減少傾向にある。まず、刑法犯少年全体の再犯者は40,381人(平成15年)から22,179人(同24年)にまで減少している。このうち、凶悪犯少年の再犯者は1,269人(同15年)から500人(同24年)に、粗暴犯少年の再犯者は7,111人(同15年)から4,045人(同24年)へ減少している。ただ、初犯者の減少ペースが再犯者の減少ペースを上回っているため、全体に占める再犯者の割合(=再犯者率)が相対的に上昇する結果となっているにすぎない。

 また、前年比でみると、凶悪犯・粗暴犯・性犯罪の再犯者は増加に転じているが(それぞれ7.1%増、5.8%増、33.3%増)、窃盗犯・街頭犯罪の再犯者は減少している(それぞれ17.6%減、13.5%減)。窃盗犯・街頭犯罪も、単に罪を犯すおそれがある者(いわゆる「虞犯(ぐはん)」)ではなく、犯罪行為を実行したとして検挙されている者であるから、「悪質な非行」から除外すべき理由はない。これらも含めると、非行少年の再犯者全体の実数は前年比で減少しているといえる。

 このように、非行少年の再犯者の実数が年々減少している傾向に変わりないことからすれば、刑法犯少年全体に占める再犯者の割合の上昇や、凶悪犯・粗暴犯の再犯者の前年比増だけをとらえて、「非行を繰り返す少年が増える傾向がある」とする評価・見解は、合理的な根拠に基づいたものとはいえない。

警察庁生活安全局少年課「少年非行情勢(平成24年1~12月」15頁

 


conclusion

 

 

 原報道は、2012年の「刑法犯少年全体に占める再犯者の割合」の「再犯者率」が33.9%だったと報じるべきところ、「非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率」と報じたのは、明らかな引用の誤りがある。
 よって、原報道は、「非行歴がある少年が再び検挙される割合の再犯率」が33.9%と過去最高になったと誤った事実を伝えたものであるから、是正されるべき誤報と認定する。

 


notes

(i) 一般に、「再犯者率」とは、一定期間に検挙された犯罪者のうち、それ以前に犯罪で検挙されたことのある者の割合を示す指標である。これに対して「再犯率」とは、検挙された犯罪者のうち、それ以後に再び犯罪で検挙された者の割合を示す指標である。「再犯率」が一定であっても、特定の人間が犯罪を何度も繰り返せば「再犯者率」は上昇する。逆に「再犯者率」が一定であっても、多くの人間が犯罪を2回ずつ実行すれば「再犯率」は上昇する。再犯率を調査するには、単年度の犯罪検挙者に占める再犯者の割合ではなく、過去の一定期間の検挙者について再び犯罪を犯したかどうかの調査が必要になる。

(ii) 「非行歴がある少年が再び検挙される割合」(いわゆる再犯率)に近い指標としては、少年院を出院後に再入院した者の比率を示す「再入院率」と、刑事施設に入所した者の比率を示す「刑事施設入所率」があり、法務省の犯罪白書が毎年公表している。最新の平成24年犯罪白書によると、平成14~23年までの少年院出院者中、再入院した者の割合は14.5~16.4%、出院後5年以内に刑事施設に入所した者の割合は8.1~9.6%となっている。再入院率・刑事施設入所率いずれの数値も、原報道が「再犯率」として報じた「33.9%」という数値とはかけ離れている。

(iii) 当機構が当該見解を公表した事実があるかを警察庁広報室に照会したところ、「担当者へ取材をしたものかと思うが、NHKの取材・報道については回答する立場にない」としている。

 


source

(1) 警察庁生活安全局少年課「少年非行情勢(平成24年1月~12月)」、平成25年2月21日発表6頁(2013年02月21日)。

(2) 警察庁生活安全局少年課「少年非行情勢(平成24年1月~12月)」凡例2(19)および凡例2(5)。

<2013/2/27 18:30掲載>
<2013/2/28 11:00訂正>
※「前年比でみると、凶悪犯・粗暴犯・性犯罪の再犯者は増加に転じているが(それぞれ7.1%増、5.1%増、33.3%増)…」の「5.1%増」を「5.8%増」に訂正しました。