「中国が日本EEZ内にブイ」 実際は中国側

2013年2月23日誤報レポートメディア:ジャンル:, テーマ:

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【産経】 2013/2/22朝刊1面トップ「中国、尖閣周辺にブイ EEZ内 海自の動き探る」 中国が尖閣諸島周辺の日本側排他的経済水域(EEZ)内で海上ブイを設置し、このことは国連海洋法条約と国内法に違反すると報じられたが、日本政府は中国による海上ブイの設置位置は日本のEEZ内ではなく、国際法違反ではないとした。


 産経新聞は、2月22日付朝刊1面トップやニュースサイトで、「中国、尖閣周辺にブイ EEZ内 海自の動き探る」の見出しをつけ、中国が尖閣諸島周辺海域に海上ブイを設置したと報じた。その際、ブイの設置場所について「排他的経済水域(EEZ)の境界線である『日中中間線』の日本側で、中国による構造物設置は国連海洋法条約と国内法に違反する」と伝えた。

 しかし、菅義偉官房長官は、22日午前の会見で、中国側が設置した海上ブイが「日中中間線の中国側」であり「国際法上特段の問題はない」と発表した。小野寺五典防衛大臣も、同日午前の会見で、設置されたブイが「日中の中間線の西側、中国側」であり、「日本の排他的経済水域内ではない」ことを確認したと発表した。

 産経新聞は23日朝刊の続報で、菅長官や小野寺防衛相の会見の一部を報道したものの、ブイが海流等によって日中中間線の日本側に入る可能性があると報じ、訂正記事は掲載しなかった。ニュースサイトの記事も23日午前10時現在、訂正や削除はなされていない。


original

『中国、尖閣周辺にブイ EEZ内 海自の動き探る』


 中国が沖縄県・尖閣諸島の周辺海域に「海上ブイ」を設置したことが21日、分かった。設置場所は排他的経済水域(EEZ)の境界線である「日中中間線」の日本側で、中国による構造物設置は国連海洋法条約と国内法に違反する。ブイには多数のアンテナが備えられており、音や海中データを収集・分析することで海上自衛隊の潜水艦の動向を把握する狙いがあるとみられる。
 政府が海上ブイを確認したのは今年に入ってから。尖閣と日中中間線の間の海域に設置され、海上保安庁はブイを撮影した。21日にも中国の漁業監視船が尖閣周辺海域で領海侵入し、日本の領海・領空への攻勢を既成事実化していることに加え、不当な行為がまたひとつ明らかになった。
 中国が設置したブイはアンテナの多さが特徴で、政府は通信機器も多数搭載していると分析。放置すれば、海中の音波から潜水艦ごとに固有のエンジン・スクリュー音を特定され、尖閣周辺での海自潜水艦の動きを確認される恐れがある。音波の伝わり方など海域によって異なる基礎データも蓄積されてしまう。
 中国の海上ブイは過去に南シナ海でも問題化している。一昨年5月、南沙諸島の領有権をめぐりフィリピンとの緊張が高まる中、中国海軍艦艇などが南沙海域に突如、ブイを設置、フィリピン政府は抗議した。
 日中のEEZの境界線は、両国の海岸線から等距離の日中中間線だが、中国側は沖縄諸島の西側まで広がる大陸棚の東端「沖縄トラフ」を主張。中間線付近にはガス田もあり、中国は平成20年、継続協議対象で現状維持すべきガス田「樫(かし)(中国名・天外天)」で不当な掘削を行っている。
 海洋法条約と国内法の「排他的経済水域と大陸棚に関する法律」では、構造物設置や科学調査はEEZを管轄する国にしか認められていない。海保の政策評価広報室は産経新聞の取材に、「一般論として構造物設置は海洋法条約に反している」と説明。中国が海上ブイを不当に設置したことについては「担当に事実関係を確認中」と回答した。

 

中国が尖閣周辺にブイ設置 日本のEEZ アンテナ多数、潜水艦把握狙う(MSN産経ニュース 2013/2/22 01:37) ※2013/2/23 10:00現在掲載確認済み

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産経新聞2013年2月23日付朝刊5面

産経新聞2013年2月23日付朝刊5面

 

 


evidence
  1.  日本政府が、中国側が尖閣諸島周辺海域に設置したとみられるブイの位置を日中中間線より中国側で、日本の排他的経済水域内ではなく、国際法に違反しないと公式に発表した

 菅義偉官房長官は、2月22日午前の記者会見で、「2月19日、東シナ海、地理的には中間線の中国側、中国側300メートルの位置において、中国国家海洋局が設置したと思われるブイを海上保安庁の巡視船が確認した。これが事実関係です。これに関しては、国際法上特段に問題があるということではありません」と発表した。(1)
 小野寺五典防衛大臣も、同日午前の記者会見で、設置されたブイが「日中の中間線の西側、中国側」であり、「日本の排他的経済水域内ではない」ことを確認したと発表した。(2)

防衛大臣会見概要(平成25年2月22日 10時25分~10時32分)の一部抜粋(防衛省)

…(前略)…

Q:一部報道で、日本の排他的経済水域内に中国がブイを設置して、自衛隊の潜水艦を把握しようとしているというような報道がありましたけれども、事実関係はいかがでしょうか。
A:このブイについては、私どもも設置前から様々な情報は収集しておりました。今回設置された場所というのは、日中の中間線の西側、中国側ということですので、日本の排他的経済水域内ではないということを確認しております。

…(中略)…

Q:海上のブイについては、情報収集をしているということなのですが、特に問題視して何か中国側に撤去を申し入れるとか、そういったことは考えていないのでしょうか。
A:これは海上保安庁の所管ということになると思います。日本の排他的経済水域内ではありませんので、あくまでも、言ってみれば船舶の通常の航行について注意喚起を行うということだと思いますので、海上保安庁がその意味でこの航行上の注意喚起をしているのだと思います。

 


conclusion

 

 

 原報道は、中国が尖閣諸島の周辺海域に「海上ブイ」を設置したと報じた際、見出しで「EEZ内」と記載し、本文で「設置場所は排他的経済水域(EEZ)の境界線である『日中中間線』の日本側で、中国による構造物設置は国連海洋法条約と国内法に違反する」と記載している。
 政府の発表では、中国が尖閣諸島の周辺海域に「海上ブイ」を設置したこと自体は事実と認められる。
 しかし、官房長官と防衛大臣がいずれも、日本政府が確認したブイの設置場所は「日中中間線の中国側」もしくは「日本の排他的経済水域(EEZ)内ではない」ことと事実関係を説明し、官房長官が「国際法に違反するものではないこと」との公式見解を示している。この公式の事実確認及び見解が事実に基づかないとの疑いを挟むべき理由は見当たらない。
 したがって、海上ブイが「日中中間線の日本側」もしくは「日本の排他的経済水域(EEZ)内」に設置された事実は認められず、「国連海洋法条約と国内法に違反する」という記述も前提事実を欠いている。

 なお、産経新聞は、23日付朝刊で、菅官房長官と小野寺防衛相の会見について続報をしたうえで(但し、国際法上特段に問題がないとの発言は報道していない)、匿名の政府高官が「碇(いかり)で固定されてはいるものの、ブイ自体は数百メートルの範囲で動き得る」との談話を掲載し、「海流の動きなどによってはブイの位置が日中中間線から日本側に入る可能性を示唆した」と報じている。
 しかし、この談話は当初の報道どおり「ブイの設置場所が日本のEEZ内であること」を裏付けるものでない。また、この談話のいうとおり、仮に海流等によってブイが動き、日本のEEZ内に入る可能性があったとしても、それは意図して「日本のEEZ内に設置した」という事実とは矛盾するものである。しかも、「ブイが日本のEEZ内に入る可能性」は事実ではなく、将来の不確実な事柄であり、現実にブイが日本のEEZ内にあるという事実が確認されているわけでもない。

 よって、原報道は、海上ブイの位置を「日本のEEZ内」もしくは「日中中間線の日本側」としたのは明確な事実誤認であり、「国連海洋法条約と国内法に違反する」との法的見解の記載も前提事実に重大な誤りがあるから、誤報と認定する。


source

(1) 官房長官会見(平成25年2月22日午前)(首相官邸)〔15:50~17:40〕※菅義偉官房長官は、会見中、海上保安庁が海上のブイを確認した日付を「2月17日」と説明したが、サイトで「19日」に訂正されている。

(2) 大臣会見概要(平成25年2月22日10時25分~10時32分)(防衛省)