海洋学会「海洋版SPEEDI開発へ」に事実誤認の指摘

2014年6月6日注意報一覧メディア:, , ジャンル:, , テーマ:

▼日本海洋学会がSPEEDIのいわば海洋版の開発を始めたかのように日経新聞などが報道したが、取材を受けた研究者が研究主体に誤りがある上、研究内容もSPEEDIのようなシステムを作ることではないと指摘している。

【日経・共同】 2014/6/2朝刊26面「日本海洋学会 放射性物質の拡散予測 海洋版を開発へ」
【静岡】 2014/6/2「海洋版SPEEDI開発へ 放射性物質拡散を予測 浜岡など3原発」

《注意報1》2014/6/6 07:00


《注意報1》2014/6/6 07:00

日本経済新聞は6月2日付朝刊で「日本海洋学会 放射性物質の拡散予測 海洋版を開発へ」と見出しをつけ、日本海洋学会が、原発事故時の大気中の放射性物質の拡散を予測する「緊急時放射性影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」のいわば海洋版を開発し始めたかのように報じた。共同通信が配信し、静岡新聞など一部地方紙にも掲載された。しかし、研究プロジェクトリーダーの升本順夫東京大学教授は、実際の研究目的は拡散予測のシミュレーションモデルを使った実験や検討にとどまると指摘。報道は研究メンバーが拡散予測システムを開発するかのような誤解を与えるおそれがある上、研究主体にも事実誤認があるとして、共同通信社に訂正を求めている。

放射性物質の拡散予測SPEEDI、海洋版を開発へ  (日本経済新聞電子版 2014/6/1 23:31)

日本経済新聞2014年6月2日付朝刊36面

日本経済新聞2014年6月2日付朝刊36面

今回報じられたのは、升本教授ら研究者8名が参加している住友財団助成の研究プロジェクト「海洋放射能汚染緊急対応予測システムの提案」。共同通信の記者が升本教授に取材して記事化したとみられる。升本教授が取材経緯などを日本報道検証機構に明らかにした。

2013年度 環境研究助成 助成対象一覧 (公益財団法人住友財団) ※升本教授らの研究プロジェクト「海洋放射能汚染緊急対応予測システムの提案」が記されている。

升本教授によれば、この研究プロジェクトのメンバー全員が日本海洋学会の会員だが、学会自体はこの研究プロジェクトに関与していないという。そのため、升本教授は研究プロジェクトの主体が「日本海洋学会」であるかのように報じたのは明らかな事実誤認だとしている。

また、升本教授らがSPEEDIのいわば海洋版を開発し始めたかのように報じられた点についても、実際は「SPEEDIのように関係先への配信までを想定したシステムを作ることではない」という。升本教授は「システムの開発や運用の主体となるのはあくまで行政で、研究者の役割はそうしたシステム構築に必要な情報やモデルを提案することだ」と強調。「究極の目的としてはSPEEDI海洋版のようなものができることを望んでおり、そこへ向けての研究であることは確かだが、いま取り組んでいる研究はそうしたシステムを将来作った際に使えるような予測モデルを構築すること。記事に書かれたように『海洋汚染や漁業被害を把握できるようにする』ことが目的ではない」と説明している。

日経新聞の記事の最後には「結果は3原発の地元自治体や漁協への提供を検討している」とも書かれているが、升本教授は「予測情報のニーズや情報提供の仕方について地元自治体等と情報交換することは検討しているが、予測結果の提供は想定も検討もしておらず、不正確だ」と話している。この点に関し、静岡新聞は、「海洋版SPEEDI」の開発を始めたことを前提に「公表方法は慎重にしてほしい」と求める県内漁業関係者の反応も伝えていた。

当機構は共同通信社に升本教授の指摘などについて見解をたずねたが、5日現在、回答は得られていない。

静岡新聞2014年6月2日付朝刊25面

静岡新聞2014年6月2日付朝刊25面