財務省審議会試算「消費税30%必要」はミスリード

2014年5月27日注意報一覧メディア:ジャンル:,

▼財務省の審議会が国の借金を減らすために「消費税30%が必要」と試算したかのように朝日新聞が報道。しかし、審議会が、消費税率に換算した試算を行ったり、消費増税が必要との見解を示した事実はなかった。

【朝日】 2014/4/29朝刊4面「国の借金減試算 消費税30%必要 財務相諮問機関」

《注意報1》2014/5/27 07:00


《注意報1》2014/5/27 07:00

朝日新聞は4月29日付朝刊で、「国の借金減試算 消費税30%必要 財務相諮問機関」と見出しをつけ、財政制度等審議会が国の借金を減らすために消費税30%への引上げが必要との試算をまとめたかのように報じた。しかし、実際は、そうした試算を審議会としてまとめた事実はなく、消費税に換算した場合の税率に言及した一部委員がいたにすぎなかった。また、試算の前提となる借金には、国だけではなく地方などが含まれていた。報道は、国の借金だけでも改善には消費税30%が必要との試算を、財政制度審議会がまとめたかのような事実と異なる印象を与えるおそれがある。

 

朝日新聞2014年4月29日付朝刊4面

朝日新聞2014年4月29日付朝刊4面

財政制度等審議会の財政制度分科会は、国の財政の持続可能性を維持するために必要な収支改善幅などを試算。4月28日の分科会で8通りの試算結果が示され、財務省のウェブサイトに公開された。朝日新聞が伝えた「国内総生産(GDP)の8.9%にあたる約57兆円分が必要」という試算は、そのうちの1つとみられる。(*)

記事は、この試算について、「消費増税によって歳入を増やすだけで達成しようとすると、消費税率を30%近くまで引き上げなければならない計算だ」と報じた。しかし、試算結果をとりまとめた資料には、「消費税30%」との記載はなかった。日本報道検証機構が調べ、財務省主計局の担当者にも確認した。

4月28日の分科会議事要旨によれば、一部委員が「2026年度までの収支改善幅を消費税率に換算すると、さらに20%程度の引上げが必要ということで、消費税率を30%程度にすれば達成できるという数字になっている」と発言。しかし、終了後の会見で、吉川洋分科会長が「消費税率をあと20%上げる必要があるとか、そういうご発言ではありません」と強調していた。この委員発言をもって審議会が「消費税30%が必要」との見解を示したことにはならないと考えられる。

また、記事では、試算が「国の借金を減らすために」「国の借金残高を60年度に2倍までに抑えるため」と、国の債務のみを前提にしたものであるかのように書かれている。しかし、試算は「一般政府ベース」(国・地方のほか、社会保障基金を含む。財務省担当者に確認)もしくは「国・地方ベース」(参考試算)を前提にし、国以外の債務も含まれていた。朝日新聞の記事は、試算結果が国の債務だけを対象にしたものだとの誤解を与えるおそれがある。

朝日新聞社広報部は当機構の問い合わせに対し、「記事は確かな取材に基づいています。個々の取材や記事執筆の経緯については、お答えを差し控えさせていただきます」とだけコメントし、訂正する考えはないとみられる。

財政制度分科会(平成26年4月28日開催)議事要旨 (財務省)

財政制度分科会(平成26年4月28日開催)記者会見 (財務省)

〔吉川洋 分科会長〕 …(略)…それから、もうお一人、別の委員の方は、2026年度までの収支改善幅、お手元の概要資料でいいますと、2枚目の真ん中あたりの計数表、収支改善幅というところですが、そこの数字をごらんになって、これを消費税率に換算するとプラス20%ということで、試算では消費税率10%への引上げは前提としていますので、プラス20で30%くらいの消費税率なのだなということを指摘されました。…(略)…
〔質問〕 最初に、委員のご発言の中で、消費税率をきちっと上げていくことと社会保障にも厳しく切り込んでいくことが必要という意見のご紹介がありました。ほかの委員の発言で、必要な収支改善幅を消費税率換算するとプラス20%ぐらいというご発言もあったと思うのですけれども、最初の消費税率をきちっと上げていく必要があるというご発言は、10%以上にということなのでしょうか。
〔吉川分科会長〕 そういう意味ではないですよ。後で紹介した方は、皆さん、お手元に持っていらっしゃる概要資料の2枚目の真ん中あたりにある数字、要収支改善幅を、例えばということで、消費税率換算した。ちなみにその発言をされた方も、消費税率を上げることだけで収支改善を図ることが必要とか、そんなことはおっしゃっていません。ここはもう皆さん、よく理解されていると思いますが、消費税率をあと20%上げる必要があるとか、そういうご発言ではありません。資料にある数字を翻訳したという、それだけですね。…(以下、略)


(*) 「現行制度」を前提に「実質経済成長率2%、名目経済成長率3%、長期金利3.7%」を想定したケース。分科会配布資料7-2「我が国の財政に関する長期推計(起草検討委員提出資料)」〔PDF〕18頁参照。

2014年4月28日会議資料7-2「我が国の財政に関する長期推計」18P

2014年4月28日財政制度分科会配布資料7-2「我が国の財政に関する長期推計」18ページ (注)赤線は日本報道検証機構による