日米「牛肉関税9%以上」 政府関係者「誤報」と指摘

2014年4月23日注意報一覧メディア:ジャンル:, , テーマ:

▼TPPの日米二国間交渉で、読売新聞が牛肉関税について9%以上で折り合い、日米首脳会談で「大きく前進」との共同声明を発表する見通しと報道。しかし、政府関係者から「誤報」の指摘が出ている。(追記あり)

【読売】 2014/4/20朝刊1面トップ「牛肉関税『9%以上』 TPP 日米歩み寄り 共同声明 『大きく前進』明記へ」、3面「農業 日米が着地点 牛肉関税『9%以上』」

《注意報1》2014/4/23 07:00

《追記》2014/4/23 12:00

《追記》2014/4/25 14:00

《追記》2014/4/26 17:15


《注意報1》2014/4/23 07:00

読売新聞は、4月20日付朝刊1面トップで「牛肉関税『9%以上』TPP 日米歩み寄り 共同声明 『大きく前進』明記へ」と見出しをつけ、日米両政府が環太平洋経済連携協定(TPP)の二国間協議で、牛肉の関税を現在の38.5%から「少なくとも9%以上とすることで折り合った」と報じた。これに対し、政府関係者から「報道とは全く違う」「誤報」といった指摘が相次いでいる。

各紙報道やTPP政府対策本部の関係者の話によると、澁谷和久内閣官房審議官は21日、記者会見を開き、20日付読売新聞など一部報道を念頭に、「報道とは全く違うというのが実感」「ガラス細工を積み上げては報道により壊れた。交渉の場で提案もしていないことが記事になり、(米国に)不信感を持たれているのが実態」と指摘したという。小泉進次郎内閣府政務官も22日参議院外交防衛委員会で「誤報」と断定している。

甘利担当相は、4月16~18日に米国で行なわれた日米二国間交渉の終了後、「一定の前進はあったが、双方にまだ相当の距離がある」と指摘。22日午前の会見でも「大筋合意には私自身はかなりの距離感を感じている」と述べていた。日米間では21~22日にも事務レベル協議が行われたが、NHKのニュース映像などによると、大江博首席交渉官代理は協議後、記者団に「詰まっていない点がたくさんある」「まだ全体に頂上が見えるというところからはほど遠い」などと述べている。

日本の牛肉関税は現在38.5%。日豪EPA交渉では4月7日、冷凍牛肉は18年目に19.5%まで、冷蔵牛肉は15年目に23.5%まで削減することで大筋合意したこともあり、TPPの日米交渉でも牛肉関税が焦点とされてきた。各メディアは、24日に予定される日米首脳会談の直前まで日米間交渉は続けられるとの見通しを伝えている。

読売新聞は23日付朝刊で、連載「基礎からわかるTPP」の中で「牛肉の関税については、現行の38.5%から、20年程度かけて少なくとも『9%以上』とすることで歩み寄りつつある」と記載。20日付報道での「9%以上とすることで折り合った」(英字紙The Japan Newsでは「Japan and the United States have agreed…」と表記)という表現から後退している。

牛肉関税「9%以上」 TPP 日米歩み寄り 共同声明 「大きく前進」明記へ(Yomiuri Online 2014/4/20)

Japan, U.S. OK 9% floor on beef tariff(The Japan News 2014/4/20)

読売新聞2014年4月20日付朝刊1面トップ

読売新聞2014年4月20日付朝刊1面トップ

 日米両政府が、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を巡る2国間協議で、焦点となっていた農業分野の取り扱いについて、「大きく前進した」との認識で一致する見通しとなった。安倍首相と来日するオバマ米大統領が24日、首脳会談に合わせてまとめる共同声明に明記する。日本が関税を守りたい農産品の「重要5項目」のうち、牛肉については、現在の38・5%から、少なくとも9%以上とすることで折り合った。
複数の政府筋が19日明らかにした。牛肉の詳細な関税率は実務者間で引き続き詰める。20年程度かけて段階的に引き下げる方向だ。(以下、略)

甘利明TPP担当大臣記者会見(2014年4月18日) (内閣府)

A.この2日間、相当突っ込んだ話し合いをした。一定の前進はあったが、まだ距離は相当ある。今後整理すべき項目について、双方、事務方に指示をしたところ。
Q.週明け、首脳会談までのスケジュールについて、決まったことはあるか。
A.月曜に、米国側事務方のカトラー、ベッター両氏が来日する。そこで、当方大江、森両大使を中心に協議を続行するということになる。
Q.フロマン自身と首脳会談前に会う可能性はないのか。
A.フロマン代表はおそらく大統領に同行して来日するのではないか。
Q.そうすると大臣との協議というものは首脳会談前には予定されていないのか。
A.特に予定は現時点ではしていない。
Q.一定の進展があったとのことだが、今日の2時間の協議で何か進展はあったか。
A.主張がぶつかり合ってきた。そこで、打開すべく、道を探るべく渡航した。それを含めて、一定の前進をしたと理解している。ただ勿論、まだ相当の距離はある。
Q.今回の協議で目指していたような十分な成果が得られなかった最大の要因は何か。
A.それぞれ国内事情を抱えている。日米の国内事情がぶつかり合っている。
Q.24日までに5品目の扱いが定まる可能性はあるか。
A.まだ相当距離はある。そこで、今後整理すべき項目について双方指示をした。その協議の具合を見守りたい。
Q.まだ相当距離がある中で、首脳会談まで日がないが、どのように協議を 進めていくのか。
A.まだ月曜、火曜と協議が行われる。距離感が広がっているか、縮まっているかといえば、縮まっているとは言える。
Q.5項目の関税についても焦点になったと思うが、何か一つ合意に近づいたものはあるか。
A.合意に至ったものはまだない。

政府高官がTPP報道に不快感、日米協議「壊れた」 (ロイター通信 2014/4/21)

報道に異例の要請=TPP政府対策本部 (時事通信 2014/4/21)

■小泉進次郎内閣府政務官(参議院外交防衛委員会 2014年4月22日) (参議院インターネット審議中継)

※質問者は藤田幸久議員(民主党・新緑風会)
Q.読売新聞、一昨日ですかね、20日、びっくりしましたけれども、実はその9%に農産品が変わったんだと、折り合ったんだということですが、この読売新聞には複数の政府筋が明らかにしたとありますが、TPPには秘密保持契約というものがあるわけですが、ということは、その複数の政府筋が誰なのかということを当然これは調査する必要があるかと思いますけれども、調査されましたでしょうか。
A.TPP交渉の中では様々な報道がありますが、今回この読売新聞の報道は誤報であると。決まったことではありません。
Q.誤報という断定の根拠を、じゃないとこれはだって秘密保持契約があるわけですから、契約に違反していることが、事実があった場合には、これ契約違反になるわけですから、誤報だと断定した根拠、つまり関係者何人にインタビューをし、あるいは調査をした結果、誤報だと断定できるのでしょうか。
A.こんな報道いろいろありますけれども、今回読売新聞ということですが、まあ今までも様々な事があります。ただその中で、仮に報道の通り決まったことがあるとするならば、アメリカのフロマン代表からもそういった発表があったでしょう。そういったこともないなかで、まさに今も10時から、大江大使とカトラーさんとの間で実務的な協議も始まっておりますし、さまざまいま交渉中でありますので、そういったいろいろな報道に右往左往するケースもあるかもしれませんが、お互い両国にとっていい形になるように、引き続き交渉にあたっていきたいと思っております。
Q.つまりアメリカ側は、これ読売ですから、デイリーヨミウリか英語版を見ている可能性も十分あると思うわけでありますが、チェックした結果、事実関係は別にしてですね、取り上げないだろうというところまではわかります。そのことと日本側で実際に調査したかどうかということは別でありまして、仮に百歩譲って、もしもそれが誤報だとしたならば、この時期に一面にあれだけのものが出るということは、これやっぱり新聞社に対して、たとえば出入りの問題だとか、売り上げの問題だとか購読の問題だとか、あるいは取材の問題に関して、何か対応しなければまずいんじゃないですか。
A.今のようなご指摘が大臣の元に届いたのかどうかはわかりませんが、この報道によって、いま大臣の元に読売新聞の方は出入り禁止と事実上そういった状態になっております。

TPP「詰まっていない点たくさん」 (NHK 2014/4/22 20:59)

TPP政府対策本部 (内閣官房)


(*) 本文中に読売新聞4月23日付記事の情報などを追記しました。(2014/4/23 12:10追記)

(**) TPP担当閣僚による交渉は24日午前に行われた日米首脳会談の後も継続され、日米共同声明は25日に発表された。その中で「TPPに関する二国間の重要な課題について前進する道筋を特定した」との文言が盛り込まれる一方、「TPPの妥結にはまだなされるべき作業が残されている」とも記され、読売新聞が事前に報道したように「大きく前進した」との表現は盛り込まれなかった。(2014/4/25 14:00追記)
日米共同声明 (外務省 2014/4/25)

(TPPに関する記述のみ以下に抜粋)
経済成長を更に増進し,域内の貿易及び投資を拡大し,並びにルールに基づいた貿易システムを強化するため,日米両国は,高い水準で,野心的で,包括的な環太平洋パートナーシップ(TPP)協定を達成するために必要な大胆な措置をとることにコミットしている。本日,両国は,TPPに関する二国間の重要な課題について前進する道筋を特定した。これは,TPP交渉におけるキー・マイルストンを画し,より幅広い交渉への新たなモメンタムをもたらたすことになる。両国は全てのTPP交渉参加国に対し,協定を妥結するために必要な措置をとるために可能な限り早期に行動するよう呼びかける。このような前進はあるものの,TPPの妥結にはまだなされるべき作業が残されている。


(***) 澁谷内閣審議官が4月21日に行った記者ブリーフィングの発言が公開されている。(2014/4/26 17:15追記)
澁谷内閣審議官による記者ブリーフィングの冒頭発言〔PDF〕 (内閣府TPP政府対策本部 2014/4/21)

 日米協議の結果とその他若干のコメントをさせていただく。
 16~18日に甘利大臣が訪米された。16日は夕食会ということだったが、17日と18日の午前中にフロマン通商代表と甘利大臣の協議を行った。一対一の場合もかなりあったようだ。いわゆる重要5品目と自動車について協議をしたということだが、扱ったテーマについては濃淡がある。時間配分という意味での濃淡はもちろんあるが、結果として特に何かが決まったということもなく、相変わらず相当の距離感があるということで終わっている。USTRのリードアウトをご覧いただくとその状況がもっとよくわかると思うが、少なくとも、日本の報道とは全く違うというのが実態だと思う。
 日米の協議は普通の二国間協議と違っている。普通の二国間協議は、先方がこれでどうだ、ここまで降りてきて欲しいと言って、日本がいやいやいやと言ってその間で折り合うのが普通の二国間交渉だが、日米の交渉は最初から今日に至るまでそのような通常の交渉とは全く違う。要は、米国が初めから相当厳しい主張、原則撤廃であるという主張を未だに崩していないという中で、日本は決議があり、日本の難しい事情があり、農業に壊滅的な被害を与えるわけにはいかないと繰り返し申し上げている。その中で、日米がどのような形で折り合えるのかという、本来は事務レベルが行う作業も含めて大臣レベルでやっているのが実態。従って、お互いに公式に言っているのは、お互いの公式見解であって、それ以上にお互いが何かカードを切っているということではないというのが実態である。報道を見るとお互いに妥協案を提示したというのがあるが、それを誤報であると繰り返し申し上げているのは、本当のことを言われて、それをむきになって否定しているのではなく、全く事実に反するからである。今日もある社が昼に豚肉では大幅引き下げで日米合意と報道していたが全くの嘘。基本的に米国は関税率や制度の撤廃を求めているのであり、日本は撤廃はとてもできないと主張している。お互いに主張しているだけでは、交渉にならないので、通常であれば、大臣協議の前に、どういった道筋があるのかというのを事務方が頭の体操をする。頭の体操といのは、仮にこういった落としどころがあるとしたら、そのためにはお互いに条件を付けなければならず、税率の引き下げなど、昨今新聞を賑わしているような単純な話ではない。大臣がおっしゃっているように、複雑な連立方程式を解くような、非常に複雑なパッケージで合意案を考えなければならないという流れの中で、一つとしてそれができていないというのが実態。牛肉でも豚肉でも米でも、日米が合意するのであれば、相当複雑な形、パッケージで合意することになると思う。あまりにも複雑なので、何%の引き下げで合意したというレベルでは合意と呼べない。当方も米国も、何がしかの方向性で合意して次に進もうということではなく、パッケージの全体像を作り上げるまではピン止めしないということなので、何も決まっていない。大江大使がガラス細工を積み上げるようにという言い方をしているが、まさにガラス細工を積み上げてはそれが A 社の報道により壊れ、ガラス細工を積み上げては B 社の報道により壊れ、今日はまた C 社の報道により壊れ、ということ。これは冗談ではなく、本当にそういうこと。正直言って、米国の日本に対する不信感はかなりのもの。米国が言ってもいないことについて米国が合意したという報道がなぜ載るのか、日本が提案もしていないことが、なぜ日米で握ったということになるのか、相当の不信感を持たれているというのが実態。ちなみに日本は、米国だけではなく他の国とも交渉をしているが、報道を見た他の国からもこれはどうなっているのかという声が寄せられている。今後、日本が TPP だけではなく、様々な交渉を行っていくに当たっても望ましくない状況だと思う。
 皆さんにしてみれば、TPP 政府対策本部がほとんど情報を発信していないので、独自の努力により色々なところから情報を取ってきて、国民に情報を早く開示したいという思いで報道をされているのかもしれないが、今日、お集まりいただいたのは、日米の交渉の実態と日米の交渉が通常の交渉とは全然違うのだということをもう少し理解していただきたいから。お互いに案を提示して、その間くらいで握る、これで合意だという単純な話ではない。牛肉だけでも相当な時間をかけて議論をしているが、まだ何一つ合意をしていない。それが単に報道されているような税率の話ではないということ。そこをよくご理解いただきたい。もっと取材して詳しく書けということは私の立場からは言えない。また、記事を書くなとも言わないが、特に相手国について、相手国がこれで合意したというのは重い内容の情報である。恐らく、日本人の情報源から何かしらの情報を得て書いたのだと思うが、私が見たところでは全て嘘。書きぶりについて、少なくとも米国が合意したとか折り合ったということは、フロマン本人に取材して裏を取っているということならともかく、恐らくそういったことではないと思うので慎重にしてほしい。仮に、甘利大臣とフロマン代表の日米の協議を実況中継しても、相当複雑で恐らくご理解いただけないのではないか。本来では課長レベルで行うような複雑な協議を大臣レベルでやっていただいている感じ。記事を書くなと言うつもりは全くないが、慎重な扱いを期待したい。5品目全てについて距離感がすごくある。米、麦、砂糖についてはもう合意したという報道があるが、米、麦、砂糖についても事務的な協議が続けられている。色々な会談における時間配分には差があるが、協議が続いており、何一つ決まっていない。特定の品目についてピン止めができていない中で大変厳しい交渉が続いている。では、まとまるのか、どうやったらまとまるのかと色々とご心配をいただいているが、10 月頃から延々と議論しており、途中いいなと思った時期もあったが、また先方が厳しくなっての繰り返し。なかなかいつまとまるのかといった見通しが厳しい中で、甘利大臣は、東京での協議と会わせて延べ 20 時間以上協議していると思うが、甘利大臣も 30 数年の国会議員生活の中でこんなことは初めてだとおっしゃっている。まとまる時にはまとまることを信じて協議を続けている。24 日にオバマ大統領と安倍総理がどういったメッセージを出すかはこれから詰めを行うということになる。カトラーはもうすぐ日本に来るが、今日は夕食を大江大使と共にする程度で、そこで明日の協議をどうするかということが決まる。大江大使関係の取材機会は今日は設けることはしないが、明日、何らかの形で準備する。それは今夜にも連絡することになる。皆さんにお願いしたいのは、通常とは違う複雑な交渉を行っているということ。情報が洩れて、特ダネとして抜かれたのであればこちらも諦めがつくが、そういうことはこれまで一度もないので、もうちょっと語尾を考慮してほしい。合意したという語尾は全て誤報となる。日米が合意した、米国が容認したという報道は全てアウト。記事を書くなとは言わないが、書きぶりの問題。心配している関係者の方に心配をかけないような記事をお願いしたい。