ハーグ条約 「国際結婚破綻」に限らず日本人同士にも

2014年4月1日注意報一覧メディア:, , , , , ジャンル:,

▼「国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めたハーグ条約」が日本で発効したと一部メディアが報じているが、条約や国内実施法は「国際結婚破綻」のケースに限っておらず、日本人同士の夫婦にも適用されるしくみになっている。

【毎日】 2014/3/31朝刊5面「社説:ハーグ条約発効 子どものため穏便な解決も」、2014/4/1夕刊8面「日本でも ハーグ条約が発効 外務省に専門家9人」、2014/4/2朝刊29面「ハーグ条約 早くも面会申請 『息子たち元気か知りたい』」【日経】 2014/3/30朝刊35面「ハーグ条約巡る紛争仲裁 委託5機関を指定 沖縄などで」、2014/4/1朝刊38面「日本にいる子と面会を ハーグ条約加盟で米男性ら申請」【共同】 2014/3/30「外務省、沖縄に紛争仲裁機関 ハーグ条約で外務省」、2014/3/31「政府が1日、ハーグ条約加盟 子ども連れ去りでルール」、2014/4/1「米の親2百人が子との面会申請へ 『日本に拉致された』」【時事】 2014/4/1「ハーグ条約発効=子の連れ去りで新ルール」【NHK】 2014/4/1「日本大使館前で子ども返還訴え」【東京】 2014/4/1朝刊7面「政府 ハーグ条約に正式加盟 子連れ去り解決ルール」

《注意報1》2014/4/1 17:45

《追記》2014/4/2 14:30(記事リストを追加しました)

《注意報1》2014/4/1 17:45

「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」いわゆるハーグ条約が4月1日、日本国内で発効したことを受け、NHKなどが「国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めたハーグ条約」などと報じている。ハーグ条約やこれに基づく国内実施法は「国際結婚が破綻したケース」を主に想定しているとみられるが、それに限定したものではなく、日本人同士の夫婦の間の子どもにも適用される仕組みになっている。一連の報道は、ハーグ条約が「国際結婚」に限定したルールであるかのような誤解を与えるおそれがある。

NHKは4月1日、ハーグ条約の発効に関連して「ハーグ条約は国際結婚が破綻して、相手の承認を得ずに子どもを国外に連れ去った親が、もう一方の親から子どもを返すよう求められた場合、子どもをそれまでいた国に戻す手続きなどを定めたもの」と報道。毎日新聞も3月31日付社説で「国際結婚が破綻し、一方の親が無断で子供を連れて出国した場合、原則としていったん元の国に子供を戻す国際的なルールを定めたのがハーグ条約だ」と、あたかも国際結婚のみを想定した条約であるかのように伝えた。共同通信や時事通信もハーグ条約を取り上げた記事で同様の報じ方をしており、日本人夫婦にも適用されるとの説明は全くなかった。

社説:ハーグ条約発効 子のため穏便な解決も (毎日新聞 2014/3/31)

毎日新聞2014年3月31日付朝刊5面(社説)

毎日新聞2014年3月31日付朝刊5面(社説)

政府が1日、ハーグ条約に加盟 子連れ去りで国際ルール (共同通信 2014/4/1 00:11)

日本大使館前で子ども返還訴え (NHK NEW WEB 2014/4/1 07:01)

国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めたハーグ条約が1日から、日本で発効するのに合わせて、アメリカで子どもを日本に連れ去られたと主張する親などが日本大使館前に集まり、子どもを戻すよう訴えました。

ハーグ条約は国際結婚が破綻して、相手の承認を得ずに子どもを国外に連れ去った親が、もう一方の親から子どもを返すよう求められた場合、子どもをそれまでいた国に戻す手続きなどを定めたもので、日本でも1日から発効します。(以下、略)

ハーグ条約や国内実施法には、連れ去られた子の両親が国際結婚であることを前提条件とした規定は設けられておらず、外務省の一般向けパンフレットにも「ハーグ条約では、父親、母親及び子の国籍は関係ありません。子が国境を越えた形で不法に連れ去られていれば、日本人同士であっても適用される可能性があります」と明記されている。つまり、外国に住む日本人夫婦の子どもを、その国から日本やその他の国に連れ去ったケースも適用される可能性がある。

ハーグ条約や国内実施法は、子どもを、普段生活していた国(常居所地国)から他国へ、子どもの監護権を侵害して不法に連れ去った場合(不法な連れ去り)に、監護権者が子どもの迅速な返還を求めるための手続などを規定。子どもの奪取の主体は親に限定していない。返還を求める主体も、その国の法律上の監護権者であり、親に限っているわけではない。対象となる行為は、不法な連れ去りだけでなく、他国にとどめ置いて常居所地国に渡航することを不法に妨げる場合(不法な留置)も含まれる。

ハーグ条約は1980年10月に作成され、2014年1月現在、世界91か国が締結。日本では締結に賛否両論があったが、2013年5月に国会で条約締結の承認がなされ、翌月国内実施法も成立した。条約上、返還申請等の担当窓口となる「中央当局」を決める必要があるが、日本では外務省が担うこととなった。

国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約) 〔パンフレットPDF〕 (外務省)

ハーグ条約パンフレット(外務省作成)8頁より一部抜粋

ハーグ条約パンフレット(外務省作成)8頁より一部抜粋

国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律

第二条(定義)  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。(一部省略)
二  子 父母その他の者に監護される者をいう。
三  連れ去り 子をその常居所を有する国から離脱させることを目的として当該子を当該国から出国させることをいう。
四  留置 子が常居所を有する国からの当該子の出国の後において、当該子の当該国への渡航が妨げられていることをいう。
六  不法な連れ去り 常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する連れ去りであって、当該連れ去りの時に当該権利が現実に行使されていたもの又は当該連れ去りがなければ当該権利が現実に行使されていたと認められるものをいう。
七  不法な留置 常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する留置であって、当該留置の開始の時に当該権利が現実に行使されていたもの又は当該留置がなければ当該権利が現実に行使されていたと認められるものをいう。
八  子の返還 子の常居所地国である条約締約国への返還をいう。

第四条(外国返還援助申請)  日本国への連れ去りをされ、又は日本国において留置をされている子であって、その常居所地国が条約締約国であるものについて、当該常居所地国の法令に基づき監護の権利を有する者は、当該連れ去り又は留置によって当該監護の権利が侵害されていると思料する場合には、日本国からの子の返還を実現するための援助(以下「外国返還援助」という。)を外務大臣に申請することができる。

(*) 産経新聞の3月31日付電子版記事(朝刊にも掲載)は、「結婚が破綻した夫婦の一方によって、国外に不法に連れ去られた子供を保護するため、元の居住国への返還などの手続きを定めたハーグ条約」と表現しており、「国際結婚」に限定した条約だとの誤解を与えるおそれは低い。連れ去り等が「結婚が破綻した夫婦」であることは条約上の要件となっておらず、その点では必ずしも正確ではないが、用語解説では「結婚が破綻した夫婦」とは限定していない。