〔続報〕「京大総長、世界から公募へ」 実際は「国内外に推薦依頼」

2014年5月3日注意報一覧メディア:, ジャンル:,

▼京都大学が次の総長を国内外から公募することを決めたかのように読売新聞と朝日新聞が報道。しかし、実際は国内外の学長等に推薦を依頼することを決めただけで「国際公募」ではなかった。(訂正・続報あり)

【読売】 2014/3/16朝刊1面「京大、学長を国際公募 改革へ指導力期待」、38面「学長国際公募 大学改革停滞に危機感」【朝日】 2014/3/17朝刊3面「京大総長 国内外から公募へ 9月に任期終える現総長の後任 競争力高める狙い」 

《注意報1》2014/3/25 07:00

《追記》2014/4/3 12:00(→取り消しました)

《訂正》2014/5/2 18:45

《注意報2》2014/5/3 17:30

《追補》2014/5/4 18:30


【訂正】本文中、京都大教職員組合の高山佳奈子「委員長」(法学部教授)とあるのは「副委員長」の誤りでしたので修正しました。また、4月3日、京大広報担当者への取材で「総長選考会議は3月10日を最後に次回の開催も決まっていない」との回答を得たと追記しましたが、実際は3月27日に会議が行われていたことが、その後公開された議事録から判明しました。お詫びして追記を取り消します。

《注意報1》2014/3/25 07:00

読売新聞は3月16日付朝刊1面で、「京大、学長を国際公募」と見出しをつけ、京都大学が次期総長(学長)について世界から公募する方針を決めたと報じた。朝日新聞も17日付朝刊で同様の見出しで報道。しかし、京大は総長選考方法についてまだ公式に発表しておらず、同大の広報担当者は「選考方法は現在も検討中で、報道されたように方針を決めた事実はない」と話している。

京大、学長を国際公募…しがらみ離れ指導力期待 (Yomiuri Online 2014/3/16 12:43)

読売新聞2014年3月16日付朝刊1面

読売新聞2014年3月16日付朝刊1面

読売、朝日の各紙は、京大が総長を決める総長選考会議で、9月に任期を終える松本紘現総長の後任を国内外から公募することを決めたかのように報道。特に、読売は「学長を国内外から公募する決断をしたのは、京大の現状に対する危機感の表れだ」などと「決断」を強調した解説記事も掲載していた。一方、産経新聞も17日付朝刊で、京大の総長選考会議での検討状況を取り上げたが、海外を含む人材の推薦を募ることや教職員から外部人材を推薦できる仕組みが議論されているが、あくまで検討中だと伝えていた。

京都大学、総長を「国際公募」へ 競争力強化を狙う (朝日新聞デジタル 2014/3/16 19:00)

朝日新聞2014年3月17日付朝刊3面

朝日新聞2014年3月17日付朝刊3面

京大は、総長選考会議を3月10日に開催しているが、24日現在、公表されている議事録の概略は2月15日の会議の分まで。それによると、遅くとも昨年11月以降、総長選考方式のあり方について議論が行われていたことがわかる。だが、同大の広報担当者は、日本報道検証機構の取材に対し「どのような案が検討されているかは答えられない」としつつ、まだ検討中だと報じた産経新聞の記事が最も正確ではないかと示唆。次回の会議も未定で、朝日が「今月中に最終決定する」とした点も否定的な見方を示した。

また、京大職員組合は「一方的な報道」と非難している。同組合が発行した3月19日付号外ニュースによると、京大の教職員で構成される教育研究評議会が18日開かれ、総長選考会議の委員の1人が「前回の総長選考会議では何も決定していません」と述べ、実際は二つの案が並立して議論されていることを明らかにしたという。それによると、学内投票を完全に廃止する「学外委員案」と、学外の推薦を取り入れる「学内委員案」が議論されており、同組合は「学外委員案」だけが一方的に報道されたと主張している。組合の高山佳奈子・副委員長(法学部教授)も「読売の記事は誤報」と自身のブログに書きこんでいた。

京大の現総長は同大工学部出身者、前総長は理学部出身者。従来は、学内の推薦、教職員の予備投票、総長選考会議による一次選考、学内意向投票というステップを経て選出されてきた。文科省によれば、国立大が海外に推薦を依頼する方式を決めれば初めての事例になるという。

平成25年度総長選考会議議事録 (京都大学)

京大総長候補に海外人材も検討 国際競争勝ち抜く経営能力を (MSN産経ニュース 2014/3/16 19:16)

職員組合ニュース(2014年3月19日発行号外)〔PDF〕 (京都大学職員組合)

京都大学職員組合2014年3月19日号

京都大学職員組合 2014年3月19日発行号外


(*) 朝日新聞は3月17日付で「今月中に最終決定する」と報じていたが、京都大学に確認したところ、まだ最終決定してはおらず、総長選考会議は3月10日を最後に次回の開催も決まっていないとの回答を得た。(2014/4/3 12:00)→実際は、3月27日に総長選考会議が開かれていたことが4月10日ごろ公開された議事録で判明しましたので、追記を取り消します。(2014/5/2 18:45追記)


《注意報2》2014/5/3 17:30

京都大学は、4月23日の総長選考会議で、総長選考方法の一部変更を正式に決定し、28日記者発表した。日本報道検証機構が入手した発表資料によると、次期総長候補者は、従来のように総長選考会議が推薦する者に限らず、国内外の学長等に推薦を依頼することが決まった。また、3月10日の総長選考会議で、「海外を含め、学外から総長候補者を推薦してもらうことについて、その方針が承認された」ことも、公表された議事録から明らかとなった。

読売新聞は3月16日付朝刊で「早ければ4月中に米ハーバード大、英ケンブリッジ大、東京大などの学長らに学長候補者の推薦を依頼する」と報じ、朝日新聞も3月17日付朝刊で同様に報じていたが、こうした方針自体は3月10日時点で確定していたため、正確な報道だったといえる。ただ、具体的な選考方法の最終決定は4月23日だったため、朝日新聞が3月中に最終決定すると報じた部分は結果的に誤りとなった。

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他方、読売、朝日の各紙はいずれも「国際公募」と見出しをつけ、本文冒頭でも「国内だけでなく世界から公募する方針を決めた」「国内外から公募する方向で一致した」と報じたが、今回決定された選考方法では、通常、公開での募集を意味する「公募」は採用されていなかった。従来も総長選考会議の判断で学外者を候補者に加えることは可能だったが、総長選考会議委員の推薦が前提となっていた。従来との違いは、総長選考会議が国内外の大学学長等に推薦を依頼し、その推薦を受け付けることとなった点や、第一次選考で絞り込んだ候補者6名のうち学外者が「2名以内」に制限されていたのが「3名以内」に緩和された点にとどまっている。

また、読売新聞は「検討中の新選考方法」との表現で、教職員の投票(学内予備投票、学内意向投票)がなくなるかのように報じていたが、いずれも存続することになった。第一次選考を受けて実施されてきた「学内意向投票」が「意向調査」に名称が改められるが、実際は投票によって行われる。なお、従来、最終選考が「学内意向投票の結果を基礎に」行うとされていたところは「意向調査を基礎に、第一次総長候補者に関する事項を総合的に判断して」行うものと変更され、総合選考会議が主体的に選考を実施することを明確化したとしている。

京大の記者発表を受け、読売新聞は4月29日付で短報扱いで「学外候補者の推薦を受け付けると発表した」と続報。朝日新聞は続報を出していない。

総長選考会議議事録(平成25年度第7回、第8回)―京都大学ホームページより

総長選考会議議事録(平成25年度第7回、第8回)―京都大学ホームページより


読売新聞2014年4月29日付朝刊33面

読売新聞2014年4月29日付朝刊33面

(**) 注意報第2報の発表にあわせて、タイトルを「『京大総長、世界から公募へ』 京大『まだ検討中』」から変更した。(2014/5/3 17:30)

(***) 注意報第2報に「京都大学総長選考方法の新旧比較」と「総長選考会議議事録」を追補した。(2014/5/4 18:30)