クリミア問題 「ロシアへの追加制裁を表明」はミスリード

2014年3月20日注意報一覧メディア:ジャンル:, ,

▼安倍首相がクリミアを編入したロシアに追加制裁を実施する考えを表明したと朝日新聞が報じたが、実際は追加制裁の検討を表明したにとどまっており、実施と明言したわけではない。(追記あり)

【朝日】 2014/3/19夕刊1面「安倍首相、ロシアを非難 クリミア編入 追加制裁を表明」

《注意報1》2014/3/20 17:30

《追記》2014/4/9 19:35

《追記》2014/4/29 23:45 (日本政府は4月29日、G7合意に基づき追加制裁を発表しています。)

《注意報1》2014/3/20 17:30

朝日新聞は、3月19日付夕刊で、「安倍首相、ロシアを非難 クリミア編入 追加制裁を表明」と見出しをつけ、安倍晋三首相が同日午前の参院予算委員会で、ロシアへの追加制裁を実施する考えを表明したと報じた。しかし、実際は、安倍首相は追加制裁について「さらなる措置を検討していく」と述べるにとどまっていた。他の主要各紙はすべて「追加制裁の検討を表明」と報じていたが、朝日新聞の報道は、安倍首相が追加制裁の実施を決めたと表明したかようにミスリードするおそれがある。

朝日新聞の記事は、本文でも「首相はロシアへの追加制裁を実施する考えを表明」と記載。ただ、その直後に「G7を含む各国と連携しながら、ロシアに対し、さらなる措置を検討していく」との発言を正確に引用していた。菅義偉官房長官や岸田文雄外相もほぼ同様の発言をしており、追加制裁を実施するかどうかはまだ決まっていないとみられる。

安倍首相、クリミア編入を非難 ロシアへの追加制裁表明 (朝日新聞デジタル 2014/3/19 12:09)

朝日新聞2014年3月19日付夕刊1面

朝日新聞2014年3月19日付夕刊1面

■参議院予算委員会(2014年3月19日) (インターネット審議中継)

Q.おはようございます。自由民主党の高階(たかがい)恵美子です。どうぞよろしくお願いいたします。はじめに、これ通告申し上げていない件なんですけども、昨夜来報道されておりますように、ロシアの大統領がクリミア自治区の編入について表明をいたしました。非常に緊張感が高まっております。この件に関する政府の受け止めと対応方針について総理にお伺いしたいと思います。
A.政府としての考え方を申し上げます。ロシアがクリミア自治共和国の独立を承認し、18日、クリミアをロシアに編入するための条約に署名がなされたことは、ウクライナの統一性、主権および領土の一体性を侵害するものであり、これを非難いたします。我が国は力を背景とする現状変更の試みを決して看過できません。我が国は昨日18日、査証簡素化に関する協議を停止し、新投資協定、宇宙協定及び危険な軍事活動の防止に関する協定の3点のあらたな国際約束の締結交渉開始を凍結することとしたところですが、引き続きG7を含む各国と連携しながら、ロシアに対し更なる措置を検討していく考えであります。ウクライナ情勢につきましては、米国政府は今般G7各国首脳が集まるハーグにおける核セキュリティサミットの際に、G7非公式首脳会談を開催することを提案いたしました。わたくしも国会の状況を含め、諸般の事情が許せば、核セキュリティサミットに出席いたしまして、G7を含む各国と連携しながら、適切に対応していきたいと考えております。ロシアに対しては先般、谷内国家安全保障局長を派遣いたしまして、ラブロフ外相およびパドルシェフ安全保障会議書記に対し、事態の平和的収拾を働きかけたところでありますが、引き続きロシア側に働き掛けていく考えでありまして、今後とも引き続き各国ともよく連携をしながら、平和的解決を求めていく考えであります。

菅義偉官房長官 記者会見(2014年3月19日午前) (首相官邸)

Q.先ほどの衆議院の内閣委員会で、ロシアへの追加制裁に言及しましたけども、具体的な制裁の内容とですね、どのタイミングで、この追加制裁を打ち出そうというふうにお考えでしょうか。
A.まず、ロシアがクリミア自治共和国の独立を承認をし、18日にロシアに編入する条約の署名が行われました。我が国は一貫してですね、ウクライナの統一性、主権および領土の一体性を侵害することは許さないということをこの会見でも申し上げてきました。こうした行為をまず非難をすると同時に、力を背景とする現状変更、その試みは決して看過できないことであるというふうに考えてます。そういう中にあって、昨日、我が国からロシアに対して、査証簡素化に関する協議を停止をする、あるいは新投資協定、宇宙協定および危険な軍事活動の防止に関する協定の3件の新たな国際約束の締結を凍結をすると、こうしたことを発表しました。さらに、この編入を行われた後に、ロシアに対して、さらなるこの制裁措置を検討していきたいというふうに思います。それについては、やはりG7のそれぞれの諸国と連携をしながら決定をしていきたいというふうに思います。
Q.G7で足並み、来週の核セキュリティーサミットでG7が集まって対応を検討するようですけども、今回の、今言及なさった制裁というのは、サミットまで、きょう、あす打ち出すという形になるんでしょうか。
A.今、G7の諸国がこの編入を受けてどうするかということを検討しますから、そこは関係国と連携をしながら対応したいというふうに思います。さらに、総理が国会の許しをいただければ、この核セキュリティーサミットに出席をし、そこで、さらにさまざまな対応をしていきたいということです。
Q.今回のロシア側の対応については、欧米から、例えば、「侵略」という言葉を使ったりとかですね、土地の横取りだという批判がありますけれども、こういった観点から、どのようにお考えですか。
A.我が国もですね、初めて「非難」という言葉を使わせていただきました。それだけ我が国としてですね、この編入は認められない、力を背景とする現状変更というのは看過できない、そういう強い思いであります。
Q.基本的に日本政府の立場としては、G7で足並みをそろえながらというところにあると思うんですけれども、アメリカやヨーロッパはロシア政府高官へのビザの発給停止であるとか、資産の凍結といった制裁を実施していると思うんですけれども、日本として今後、検討される追加の制裁において、足並みをそろえるという意味で、そういった措置は検討の余地があるんでしょうか。
A.G7のそれぞれの国々とですね、連携をして行っていくわけでありますけども、それぞれの国によって、どういう制裁をとるかということは今、制裁中の内容を見てもそれぞれ違っているということも事実じゃないでしょうか。
Q.岸田外務大臣の訪ロとかプーチン大統領の訪日ですとか、日本側の意向なりというのは変わらないんでしょうか。
A.まだ先の話ですから、そこについては全く考えてないということ、これからのことです。
Q.24日、25日の核サミットにおけるG7での会合前に、各国と日本が連携を図って追加制裁をする可能性というのはあるんでしょうか。
A.いや、ですから、編入を受けてですね、今、さまざまなルートで連絡を密にしているということです。
Q.あり得るということですか。
A.連立を密にしながら考えていくと、連携を密にしながら考えていくと。

菅義偉官房長官 記者会見(2014年3月20日午前) (首相官邸)

Q.ウクライナ情勢で伺います。ロシアのプーチン大統領はクリミアを自国領とする動きを加速させているようですけれども、これに対する受けとめと、きのう言及なさいました追加制裁のタイミング、日本政府としての対応をお願いします。
A.まず、我が国の基本はですね、クリミアをロシアに編入するこの条約の署名がなされたことについては、従来から言っていますように、ウクライナの統一性、主権および領土の一体性を侵害するものであり、これについては非難をするということです。そして、我が国は、力を背景とする現状変更の試みは決して看過しないと、看過できないと、そういう立場でありまして、今後の制裁についてはG7の関係諸国とですね、連携をしながら、そこは対応を考えていくということです。
Q.追加制裁を話し合うために、きょうNSCの開催を予定しているとか、そういったことはありますか。
A.そういうことも含めて、今、検討しています。

岸田文雄外務大臣 記者会見(2014年3月20日) (外務省)

Q.ロシア軍がクリミアの域内で,かなり軍事的な動きをウクライナ軍に対して強めていたり,一部死者も出たりとか,かなり混乱が広がっているようなのですけれども,日本の追加制裁を考えたときに,今もう,かなりそういうことを検討するような段階になってきたのか,状況をどういうように考えていらっしゃいますか。
A.ウクライナ情勢については,力による現状変更は許されない,こういった我が国の考え方は,従来からしっかり伝えてきております。そして,これに対する措置としては,一昨日,我が国の措置は発表させていただきました。今後については,状況も動いておりますし,そして,G7をはじめとする各国の議論も行われております。こういった状況を見ながら,適切に対応していきたいと考えています。


(*) 世耕弘成官房副長官は4月9日の記者会見で、日本政府のロシアへの追加制裁の可能性について問われ「鋭意情報収集を行っている段階でありますから、今の時点では何も決まっておりません」と答えている。(2014/4/9 19:35追記)
世耕弘成官房副長官記者会見(2014年4月9日午前) (首相官邸)

(**) 政府は4月29日、クリミア問題でのロシアへの追加制裁を発表した。日本は26日にG7首脳声明で追加制裁をとることを明らかにしていた。なお、追加制裁発表に関する一部報道で欧米と「足並みをそろえた」「歩調をあわせた」との解説がなされているが(29日付朝日新聞デジタルなど)、欧米が発表した追加制裁は資産凍結であるのに対し、日本が発表した内容はビザ発給停止にとどまっている。(2014/4/29 23:45追記)
ウクライナ情勢に関するG7首脳声明 (外務省 2014/4/26)
ウクライナ情勢を受けたロシアに対する制裁について(外務大臣談話) (外務省 2014/4/29)