もんじゅ「白紙化」報道 文科相「頓挫させてはならない」

2014年3月1日注意報一覧メディア:ジャンル:, テーマ:

▼日経新聞が1面トップで、政府が高速増殖炉もんじゅの実用化を「白紙」に戻すと報じたが、官房長官は否定。文科相は今後も実用化研究を進めるべきとの考えを示した。(続報あり)

【日経】 2014/2/7朝刊1面トップ「もんじゅ『増殖炉』白紙 エネ計画から削除」、2014/2/7夕刊1面「もんじゅ見直し『徹底的に議論』」

《注意報1》2014/2/8 07:00

《注意報2》2014/3/1 07:00

《追記》2014/4/12 11:10


《注意報1》2014/2/8 07:00

日本経済新聞は2月7日付朝刊1面トップで「もんじゅ『増殖炉』白紙」と見出しを掲げ、政府が高速増殖炉もんじゅの実用化に向けた目標を白紙に戻し、これまで掲げてきた開発計画や期限を新たなエネルギー計画に入れないことを決定したかのように報じた。これに対し、菅義偉官房長官は同日の会見で「報道のような方向性を決めた事実は全くありません」と述べ、下村博文文科相も「本来、掲げた夢はここで頓挫させるようなことがあってはならない」と白紙化を否定している。

日本経済新聞2014年2月7日付朝刊1面

日本経済新聞2014年2月7日付朝刊1面

菅官房長官は会見で「エネルギー基本計画については、もんじゅを含め、さまざまなご意見を踏まえて徹底的に検討を行い、与党ともしっかり調整した上で決定する」と述べた。下村文科相も報道を否定した上で、「もんじゅ研究計画に示された研究に着実に取り組むことが重要」と今後も実用化研究を進めるべきとの考えを示した。

高速増殖原型炉もんじゅは、日本原子力研究開発機構が事業主体となり、文科省と経産省が所管。もんじゅをめぐっては近年トラブルが相次いでおり、菅官房長官はこの日の会見で、組織見直しが必要と明言。下村文科相も「機構の抜本的な立て直し」に言及した。

日本経済新聞は7日付夕刊1面で、菅官房長官が組織の見直しの必要性に言及したと続報したが、下村文科相が実用化研究を継続する考えを示したことは伝えなかった。逆に、もんじゅを所管していない甘利明経済再生相が会見で「もんじゅを核のゴミの減量施設に転用する可能性に含みを持たせた」と報じたが、実際は会見の中で「もんじゅを核のゴミの減量施設に転用する案」への言及はなかった。(*) 同紙は8日付朝刊の続報で、「政府は新たなエネルギー基本計画で2050年までに高速増殖炉を実用化する従来目標を盛り込まない方針」と、当初の「白紙化」から表現を大幅に後退させている。

エネルギー基本計画は国の中長期的なエネルギー政策を定め、少なくとも3年おきに見直しが必要。直近の2010年の計画では、もんじゅについて「2025 年頃までの実証炉の実現、2050 年より前の商業炉の導入」という目標を掲げていた。現在、経産省を中心に基本計画の見直しを進めており、昨年12月、「もんじゅ研究計画に従い、高速増殖炉の成果のとりまとめ等を実施する」と記した素案をまとめている。

(*) この転用案については、7日付産経新聞電子版が「自民党内の意見」として伝えている(MSN産経ニュース「もんじゅ実用化見直し 自民、エネ計画に盛り込み検討」)。

『もんじゅ「増殖炉」白紙 政府、エネ計画から削除 核ゴミ減量施設へ転用案』

 政府は発電しながら消費した以上の核燃料を生み出せるとしてきた高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)の実用化に向けた目標を白紙に戻す。これまで掲げてきた開発計画や期限を新たなエネルギー基本計画に入れない。トラブルが続き、燃料となるプルトニウムを増やす「増殖」のめどが立たないためだ。原子力発電所から出るゴミを減らす研究施設に衣替えする案が出ている。(以下、略)
(日本経済新聞2014年2月7日付朝刊1面より一部抜粋)

日本経済新聞2014年2月7日付夕刊1面

日本経済新聞2014年2月7日付夕刊1面

菅義偉官房長官記者会見(2014年2月7日午前) (首相官邸)

Q.高速増殖炉もんじゅについて、エネルギー基本計画に盛り込まず、実用化目標を白紙にするとの報道がありますが、受けとめをお願いします。
A.今日そうした報道があったことは承知しておりますが、新たなエネルギー基本計画は現在検討を進めているところであり、ご指摘の報道のような方向性を決めた事実は全くありません。いずれにしても、エネルギー基本計画については、もんじゅを含め、さまざまなご意見を踏まえて徹底的に検討を行い、与党ともしっかり調整した上で決定することとしており、政府として責任を持って対応してまいりたいと考えています。
…(略)…
Q.もんじゅの話に戻りますが、もんじゅをどうするかという以前に、もんじゅを運営している日本原子力研究開発機構の組織の問題が大きいかと思いますけど、増殖とか核燃料サイクルをどうするかとは別に、組織を何とかしなければいけないという問題意識はございますか。
A.ここは正直言ってあります。ただ、文科省で、いろんな不祥事が多発する中でですね、今、しっかりとこれ、対応をし始めていますので、そこは必要があるというふうに思ってます。

下村博文文部科学大臣記者会見(2014年2月7日) (文部科学省)

Q.「もんじゅ」をエネルギー基本計画の中に入れないという報道がありましたけれども、今後の対応についてお願いします。
A.新たなエネルギー基本計画については、昨年12月に総合資源エネルギー調査会で取りまとめられたエネルギー基本計画に対する意見を踏まえ、現在政府内で検討を進めているところで、報道のような方向については全く事実ではありません。「もんじゅ」については、まずは原子力機構改革の中で運転管理体制を整え、克服すべき課題に1つずつ着実に 取り組んだ上で、「もんじゅ」研究計画に示された研究に着実に取り組むことが重要と考えており、今後、閣議決定に向けて、引き続き、責任を持って対応していきたいと思います。
Q.そういう検討はなされているのか。
A.まず、政府の中でのそういう方向について決定したことは全くないということです。ただ、自民党の中で、ある議員がそういう発言をされてるということは報告を受けています。私としては、核燃料を無限に使い回しできるということで、「もんじゅ」というのは夢の原子炉としてスタートしたという経緯がありますから、日本としても、また人類としても、捨てることではないと思います。ただ、あまりにも今までの「もんじゅ」における現場の対応が、いろいろとお粗末で、国民から不信感を買って、それに対して原子力規制委員会が厳しく対応しているということがあり、今後の機構の抜本的な立て直しを含めて、「もんじゅ」については謙虚に対応していく必要があると思います。しかし、本来、掲げた夢はここで頓挫させるようなことがあってはならないのではないかと私自身は思っています。
Q.「もんじゅ」は第一義的には、増殖炉としての働きを担っていくことが肝心だとお考えということでしょうか。
A.そうですね。私としてはというか、文部科学省としては、当然そういうスタンスで臨むべきだと思います。

■茂木敏充経済産業大臣記者会見(2014年2月7日) (経済産業省)

Q.今朝の一部報道で、「もんじゅ」に関する計画を白紙に戻してエネルギー基本計画から削除するという報道あります。事実関係と大臣のお考えを。
A.そのようなことは決まっておりません。現在、昨年末の基本政策分科会の意見を踏まえ、またパブリックコメント等も反映させながら、政府原案を丁寧に作成をする作業でありまして、現段階において報道のようなことは決まっておりません。
Q.報道には一部、核のごみを減らす方向に転用するということもあるんですけれども、そういったことも。
A.それも含めて決まっておりません。

甘利明経済再生担当大臣記者会見(2014年2月7日) (首相官邸)

Q.少し所管を外れますけれども、エネルギー基本計画に関して、高速増殖炉の「もんじゅ」について実用化に向けた目標を白紙に戻す、基本計画に入れないという一部報道がありましたけれども、事実関係とその受け止め、どう考えたらいいのかお願いします。
A.これはまだそういう決定には至っていないと承知しております。「もんじゅ」というのは、資源少国日本が、どうやってエネルギーのリサイクル利用をしていくかということ、それから最終的な廃棄物の絶対量を減らしていくという、この二つの精神でスタートした事業であります。そのスタート以降、いろいろな事案、事件で頓挫しておりますけれども、そのスタートの時の考え方と、今後のエネルギー政策、なかんずく原子力政策をどうすり合わせていくかということを、経済産業省を中心に取り計らっていって、結論が出ていくのであろうと思っています。

エネルギー基本計画(平成22年6月) (参照) (経済産業省)

 高速増殖炉サイクル技術は、我が国の長期的なエネルギー安定供給等に大きく貢献するものであり、早期実用化に向けた研究開発を着実に進めることが重要である。2010 年5月に試運転が再開された高速増殖原型炉「もんじゅ」の成果等も反映しつつ、2025 年頃までの実証炉の実現、2050 年より前の商業炉の導入に向け、引き続き、経済産業省と文部科学省とが連携して研究開発を推進する。
具体的には、高速増殖炉サイクルの実用化に関するこれまでの研究開発の成果を踏まえ、2010 年度に革新技術の採否判断等を行う。また、実用化を一層円滑に進めるため、進捗に応じたプロジェクトの進め方・役割分担等を検討する。加えて、高速増殖炉の実用化技術の早期確立を図るとともに、将来の国際標準を可能な限り我が国が確保するため、国際協力を適切に進め、将来のエネルギー安全保障を担う国家的な基幹技術としての性格を踏まえ、我が国の自立性を維持しつつ互恵的な国際協力関係を構築する。

エネルギー基本計画に対する意見 (参照) (経済産業省資源エネルギー庁)


《注意報2》2014/3/1 07:00

政府は2月25日、原子力関係閣僚会議で、エネルギー基本計画案を取りまとめた。もんじゅについては、あらゆる面で徹底的な改革を行うとする一方、もんじゅ研究計画で示された研究の成果を取りまとめることを目指すことも記された。

政府の新エネルギー基本計画案が言及した「もんじゅ研究計画」とは、文科省が昨年9月策定したもの。研究開発分野を(1)高速増殖炉の成果の取りまとめ、(2)廃棄物の減容及び有害度の低減、(3)高速増殖炉の安全性強化の3本柱とし、6年後に研究成果をとりまとめるとしている。

政府の新エネルギー基本計画案をみると、現行のエネルギー基本計画の「25年ごろまでの実証炉の実現、50年より前の商業炉の導入」という目標は削除された。他方で、もんじゅ研究計画を進める方針が盛り込まれていることから、増殖炉の実現を目指す方針そのものは撤回しておらず、「白紙化」とはいえない。

日本経済新聞は2月7日付朝刊で、政府がもんじゅの実用化に向けた目標を白紙に戻し、開発計画や期限を新エネルギー計画に入れないことを決めたかのように報じた。しかし、政府の新エネルギー計画案は実証炉・商業炉の目標時期を削除しただけで、もんじゅ研究計画に触れることで増殖炉の研究開発を進める方針を示したといえる。

また、同紙は2月25日付夕刊で、政府のエネルギー基本計画案について「もんじゅを使った研究で、発電しながら消費した以上の核燃料を生み出せるとしてきた『増殖』は計画から姿を消した」と伝え、26日付朝刊でも同様に報道。しかし、もんじゅ研究計画は増殖炉実用化に向けた研究開発を掲げており、「『増殖』は計画から姿を消した」という表現はミスリードといえる。

なお、朝日新聞は、新エネルギー計画案でももんじゅの従来の位置づけは維持されていると指摘。毎日新聞も、増殖を目指す現行政策を維持していると伝えている。

エネルギー基本計画案 (原子力関係閣僚会議 第2回 2014/2/25)

もんじゅについては、これまでの取組の反省や検証を踏まえ、あらゆる面において徹底的な改革を行い、国際研究協力の下、もんじゅ研究計画に示された研究の成果を取りまとめることを目指し、そのため実施体制の再整備や新規制基準への対応など克服しなければならない課題について十分な検討、対応を行う。(p.43より一部抜粋)

もんじゅ研究計画 (文部科学省 原子力科学技術委員会 2013/9/25)
「もんじゅ研究計画」について(PDF) (文部科学省 研究開発局)
※3頁に「もんじゅ研究計画」の骨子(研究開発分野の3本柱とスケジュール)が示されている。



(*) 政府は4月11日、「エネルギー基本計画」を閣議決定した。同計画にも、文科省が昨年9月策定した「もんじゅ研究計画」で示された研究の成果を取りまとめることを目指すことが明記された。(2014/4/12 11:10 追記)
エネルギー基本計画について (経済産業省資源エネルギー庁)

エネルギー基本計画(2014年4月11日閣議決定)46頁より一部抜粋

エネルギー基本計画(2014年4月11日閣議決定)46頁より一部抜粋