日銀総裁「景気腰折れなら追加緩和」とは明言せず

2013年9月7日注意報一覧メディア:, , ジャンル:, テーマ:

▼日銀総裁が定例会見で消費増税で景気が腰折れした場合に追加の金融緩和を行う方針を表明したかのように一部報道。しかし、日銀総裁は景気腰折れ時は財政政策で十分対応できるとし、金融政策は従来どおりと説明していた。

【読売】 2013/9/6朝刊11面「日銀 景気判断引き上げ 生産・家計支出が好循環 物価上昇『好ましい方向』」【朝日】 2013/9/6朝刊1面「増税時の緩和表明 日銀総裁『景気悪化なら』」【産経】 2013/9/6朝刊1面「消費増税先送り牽制 日銀総裁 景気失速なら追加緩和」

《注意報1》2013/9/7 07:00

《加筆あり》2013/9/7 09:15


《注意報1》 2013/9/7 07:00

朝日新聞は9月6日付朝刊1面で、「増税時の緩和表明 日銀総裁『景気悪化なら』」と見出しをつけ、黒田東彦・日銀総裁が5日の記者会見で、予定どおり消費増税を実施し、景気が悪くなるおそれがある場合は追加の金融緩和に踏み切る方針を「正式に表明した」と報じました。しかし、日銀がホームページで公開した会見録によると、黒田総裁は、増税で景気が腰折れした場合でも財政政策で十分対応できると指摘し、追加の金融緩和に踏み切るとの方針を表明してはいませんでした。

朝日新聞は、記事本文で、黒田総裁が「仮に景気に大きな影響が出るリスクが顕在化したとすれば、金融政策では当然適切な対応を取る」と述べたと報道。ところが、会見録によると、黒田総裁は、予定どおり増税を実施しても「景気が腰折れするとは思っていません」と指摘した上で「仮に景気に大きな影響が出るリスクが顕在化したとすれば、財政政策で十分対応できるでしょう」と述べていました。これは、黒田総裁が、仮に増税で景気に影響が出たとしても原則として財政政策のみで対応できるとの認識を示したものと考えられます。

他方、金融政策について、黒田総裁は「2%の物価安定の目標の実現に対して下方リスクが顕在化すれば、当然それに対して適切な対応を採ります」と発言していいますが、4月4日に決定した「量的・質的金融緩和」の方針と変わらないと繰り返し説明。これは、金融緩和の方針は2%の物価安定目標と連動して行うとの方針を確認したもので、景気対策として行うとの考えは示したものではないと考えられます。

産経新聞や読売新聞も、黒田総裁が増税で景気が失速したら追加の金融緩和を行うと表明したかのように報道。産経は、黒田総裁が「増税で景気が失速した場合は、『財政政策や金融政策によって景気を下支えできる』との見方を示した」と伝えていますが、カギ括弧で引用されたような発言は確認できませんでした。

他方、毎日新聞と日本経済新聞は、黒田総裁が物価安定目標と関連づけて「適切な対応」に言及したと伝えており、「景気悪化時に追加の金融緩和を行うと表明した」とは報じていませんでした。

朝日新聞2013年9月6日付朝刊1面

朝日新聞2013年9月6日付朝刊1面

産經新聞2013年9月6日付朝刊1面

産経新聞2013年9月6日付朝刊1面

総裁記者会見要旨(2013年9月5日)一部抜粋 (日本銀行)

Q.消費増税の関連でお伺いします。先週、官邸で有識者ヒアリングが行われ、総裁もご出席されて色々な方の意見を伺ったかと思います。様々な意見があったと思いますが、消費増税を先送りした場合は、政権の指導力といったものへの懸念から株安・債券安へといった不安があるのではないかという意見がある一方で、増税すると、逆に、来年春の景気が腰折れするのではないかという意見も出ていたと思います。総裁は、増税を実施した場合、あるいは先送りした場合に顕在化するリスクについて、どうお考えなのか。また、そうしたリスクに対して、日銀として何らかの追加策を検討していることがあるのかどうかをお伺いします。

A.以前から申し上げている通り、消費税率の引上げの問題については、政府において、経済状況などを総合的に勘案して判断されると認識しています。日本銀行では、4 月の展望レポートあるいは 7 月の中間評価においても、消費税率が予定通りに引き上げられることを前提に、経済・物価見通しを作成しています。そこでお示しした通り、駆込み需要とその反動といった振れは予想されますが、基本的には、経済の前向きな循環は維持され、基調的に潜在成長率を上回る成長を続ける可能性が高いと考えています。…(中略)…日本銀行としては、常に、上下双方向のリスクをみており、2%の「物 価安定の目標」を実現するために必要な施策を行っていくということに尽きると思います。

Q.消費税の質問にお答えになった中で、国債価格の下落リスクは、分からないけれども、顕現化した場合には非常に対応が困難であるというお話でしたが、「対応が困難になる」とは、どのような状態を指していらっしゃるのでしょうか。財政出動や金融政策とか色々な面からだと思うのですが、具体的に詳しく教えて下さい。

A.消費増税を先送りした場合の影響については、…(中略)…先程から何度も申し上げている通り、先送りした場合のリスクが顕在化する可能性、確率がどのくらいあるかは、人によって考え方も見方も違いますし、マーケットには「相当ある」と言う方もおられますが、これは、不確実で分からないと思います。ポイントは、仮に、そういうリスクが顕在化した場合には、対応が極めて困難であるということです。
それに対して、私どもは、予定通り消費税率を引き上げたもとでも、基調的に潜在成長率を上回る成長が続くと思っており、景気が腰折れするとは思っていません。仮に、景気に大きな影響が出るリスクが顕在化したとすれば、それは、財政政策でも十分対応できるでしょうし、金融政策でも、2%の「物価安定の目標」の実現に対して下方リスクが顕在化すれば、当然、それに対して適切な対応を採ります。これは、4月4日の「量的・質的金融緩和」導入時から申し上げている通りです。

「量的・質的金融緩和」の導入について(2013年4月4日・金融政策決定会合)  (日本銀行)

(*) 読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞に関する記述を追加しました。(2013/9/7 9:15)