「労働時間規制に特例、政府方針」 厚労相は否定

2013年8月19日注意報一覧メディア:ジャンル:, , テーマ:

▼一部の大企業で年収が800万円超の社員を対象に労働時間規制の特例を設けるための法案を、政府が秋の臨時国会に提出すると日経が報道。これに対し、厚労相が「何の説明もない」と否定している。

【日経】 2013/8/14朝刊1面「課長級から勤務柔軟に 政府、時間規制に特例 年収800万円超 トヨタや三菱重に打診」、同5面「生産性の向上後押し 労働時間に特例 成果給拡大が課題」

《注意報1》2013/8/18 07:30

《注意報2》2013/8/19 20:30


《注意報1》 2013/8/18 07:30

日本経済新聞は8月14日付朝刊1面トップで、政府が、大企業で年収800万円を超える社員を対象に労働時間規制の特例、いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」を採用できるような新制度を、秋の臨時国会に提出予定の産業競争力強化法案に盛り込むと報じました。この記事は、新制度導入が政府内で決まった方針であるかのような印象を与えますが、田村憲久・厚生労働大臣は15日の会見で「我が省は何の説明もいただいておりません」と述べ、まだ政府内で調整されていないことを示唆しています。

田村厚労相は会見で「本来、労働政策審議会の方で議論していただく案件と認識している」と述べ、まだ議論が必要との認識を示しています。日経の報道を受け、共同通信もこの新制度について政府が「一部の企業に特例的に認める方向で検討している」と伝えましたが、経産省が導入に前向きであるのに対し、厚労省からは疑問の声が出ていることを指摘し、政府内でまだ検討段階であることを示唆しています。

課長級から勤務柔軟に 政府、時間規制に特例 年収800万円超 トヨタや三菱重に打診(日本経済新聞 2013/8/15朝刊1面)※電子版全文は有料版

 政府は1日8時間、週40時間が上限となっている労働時間の規定に当てはまらない職種を新たにつくる方針だ。大企業で年収が800万円を超えるような課長級以上の社員が、仕事の繁閑に応じて柔軟な働き方をできるようにして、成果を出しやすくする。新たな勤務制度を2014年度から一部の企業に認める調整を始め、トヨタ自動車や三菱重工業などに導入を打診した。
 労働基準法は時間外労働への残業代の支払いのほか、休日や深夜労働に伴う割増賃金の支給を企業に義務づけている。この労働時間の規定を、いわゆるホワイトカラーの一部に適用しない「ホワイトカラー・エグゼンプション」を企業が実験的に採用できるようにする。秋の臨時国会に提出予定の産業競争力強化法案に制度変更を可能とする仕組みを盛り込む。…(以下、略)

日本経済新聞2013年8月14日付朝刊1面

日本経済新聞2013年8月14日付朝刊1面(一部切取り加工)

日経は14日付朝刊の経済面にも解説記事を掲載し、「政府が実験的に労働時間規定の適用除外(ホワイトカラー・エグゼンプション、WE)に道を開くのは、日本企業の国際競争力の強化に生産性の向上が欠かせないからだ」「人口減少が続く中で、日本経済が成長力を維持・強化するには労働者1人あたりの生産性向上が必要と政府は判断した」などと指摘。この記事でも、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入することを政府の既定方針であるかのように書かれていますが、一部の省の意向だけをもって「政府全体の方針」であるかのようにミスリードしている可能性があります。

田村大臣閣議後記者会見概要(2013年8月15日午前) (厚生労働省)

Q.一部の報道でなんですが、ホワイトカラーエグゼンプションをですね、実験的に行うというものが出ておりましたが、事実関係の説明をお願いいたします。

A.我が省は何の説明もいただいておりません。そのような事実があるというふうには認識をいたしておりません。いずれにいたしましてもですね、企業活動の柔軟性、これを図っていくことと、労働者の方々の健康や、それから生活時間等々の確保ですね、こういうことをしっかりと確保していく点といいますかね、そういうところのバランスを考えなきゃいけない話でございますので、そのような意味からいたしますと、国民的な理解をどのように得ていくかというような問題がこのホワイトカラーエグゼンプションにはあるというふうに思います。労働者の方々の職場環境といいますか、そういうことに大きく関わる問題でございますのでね、これはやっぱり本来、労働政策審議会の方でですね、御議論をいただく案件ではないかというふうに私どもは認識をいたしております。

労働時間規制に特例  一部企業で実験導入検討  「過労死招く」労組反発 (共同通信2013/8/16)


《注意報2》 2013/8/19 20:30

日本経済新聞は8月14日付で、政府が一部の大企業に労働時間規制の特例(ホワイトカラー・エグゼンプション)を採用できるよう、秋の臨時国会に提出予定の産業競争力強化法案に盛り込む方針と報じました。この報道について、同法案を主導している経産省に確認したところ、「そのような予定は今のところない」(経済産業政策局)と明確に否定しています。

また、政府がトヨタ自動車や三菱重工業などに新制度の導入を打診したとの報道についても、経産省は「何らかの打診を行った事実はない」としています。厚労省の担当者も「打診をした事実はない」(労働基準局)と答えています。

田村厚労相は会見で、労働政策審議会での議論が必要との認識を示していますが、厚労省によると、8月22日に予定されている労働政策審議会で「ホワイトカラー・エグゼンプション」について議論する予定はないとのことです。

当機構の取材に対し、経産省の担当者は「一般論としては柔軟な働き方の検討は必要だが、労働条件については厚労省とともに検討、調整していくことになる」とし、厚労省の担当者は「報道にあるように実験的に導入するのは好ましくないと考えている」としています。