鳩山氏「盗んだものは返すのが当然」 見出し要注意

2013年7月7日注意報一覧メディア:ジャンル:, , テーマ:

▼鳩山元首相が中国で尖閣諸島について「盗んだものは返すのが当然」と発言したかのように時事通信の記事の見出しで報道されたが、実際は中国の立場に理解を示したにとどまり、返還すべきと表明したものではないとみられる。

【時事】 2013/6/27「尖閣『盗んだものは返すのが当然』=鳩山元首相、中国でも発言」

《注意報1》 2013/7/7 07:30

時事通信は、6月27日付で「尖閣『盗んだものは返すのが当然』=鳩山元首相、中国でも発言」の見出しをつけ、鳩山由紀夫元首相が27日、中国の清華大学主催のフォーラムに出席した際の尖閣諸島に関する発言を報じました。この見出しだけを見ると、「盗んだものは返す」という表現がカイロ宣言の引用であることが伝わらない上、あたかも鳩山氏が尖閣諸島を中国に返すべきとの自らの考えを表明したかのように認識される可能性があります。しかし、記事本文で引用された鳩山氏の発言内容や各紙の報道も踏まえると、鳩山氏は「日中それぞれに言い分がある」と言及し、中国側の立場にも一定の理解を示してはいるものの、中国に返還すべきとの考えを表明したわけではないとみられます。

時事の記事は、本文では鳩山氏が「ポツダム宣言の中で日本が守ることを約束したカイロ宣言は『盗んだものは返さなければならない』としており、中国側が(返還すべき領土の中に尖閣諸島が)入ると考えるのも当然だ」、「…中国側として中華民国に返せという中に当然入るのではないかという理解も成り立ち、それを否定するものではない」と発言したと伝えています。他紙は「カイロ宣言は日本が清国から盗んだものは返さなければならないとしている。中国が(尖閣諸島が)当然入ると思うことを否定するものではない」(読売新聞6月28日付朝刊)、「中国側としては当然、カイロ宣言(の中の日本が盗んだ島)に入ると考えることはあるだろう」(MSN産経ニュース6月27日付・共同電)という発言を伝えています。

他方で、日本経済新聞(電子版)によると、鳩山氏は「領土問題にはそれぞれの国の言い分がある」とも発言した上(前出共同電もこの発言を報道)、「対立の棚上げ」など5原則を提案した台湾の馬英九総統の考えへの支持を表明したとのことです。この台湾側の提案(東シナ海平和イニシアティブ、2012年8月発表)には中国は賛同していないとされる一方、日本政府は玄葉外務大臣が肯定的なメッセージを出したことがあります(交流協会を通じた台湾の皆様への玄葉外務大臣のメッセージ)。こうした「棚上げ」への言及や「それぞれの国の言い分がある」という発言とあわせると、鳩山氏は尖閣諸島を中国に「返すのが当然」という考えを表明したものではないと考えられます。

なお、当機構が調査したところ、時事通信が見出しにつけた「盗んだものは返すのが当然」というフレーズは、インターネット上で一人歩きして拡散し、主要紙のニュースサイトでも「尖閣について『中国から盗んだものは返さねばならない』と発言した鳩山由紀夫元総理」と書かれた外部執筆者の記事を確認(MSN産経ニュース7月6日付記事)。時事通信の見出しがきっかけで、日本の元首相が尖閣諸島を中国に返還すべきとの考えを表明したという誤った事実認識が内外に広まる可能性があります。

尖閣「盗んだものは返すのが当然」=鳩山元首相、中国でも発言

時事通信2013年6月27日付

時事通信2013年6月27日付

中国外相「領土争い棚上げし共同開発を」フォーラムで講演 (日本経済新聞電子版2013/6/27 18:47)

鳩山由紀夫元首相講演全文(英語版) (東アジア共同体研究所 2013/6/27)
鳩山由紀夫元首相講演全文(中国語版) (World Peace Forum 2013/6/27)

<参考>

外交部:馬総統が「東シナ海平和イニシアチブ」を提起 (台北駐日経済文化代表処 2012/8/6)
交流協会を通じた台湾の皆様への玄葉外務大臣のメッセージ (公益財団法人交流協会台北事務所 2012/10/5)

(*) 鳩山元首相の講演全文のリンクを追加しました。(2013/7/7 20:30)