共通番号法 「一元管理」ではなく「分散管理」

2013年5月29日注意報一覧メディア:, , , , , ジャンル:,

▼いわゆる共通番号(マイナンバー)法が成立。国民の情報を「一元管理」「まとめて管理」する制度と報道されたが、実際は「分散管理」。法律上、一元的に管理する仕組みにはなっていない。

【読売】 2013/5/24夕刊1面「共通番号法が成立 16年から 年金・税を一元管理」、2013/5/24Yomiuri Online「共通番号法が成立 社会保障と納税、一元管理」【朝日】 2013/5/25朝刊1面「共通番号法成立、政府が一元管理 国民の情報、給料・不動産など93項目対象」【毎日】 2013/5/20朝刊「社説:共通番号法案 知る権利にも目配りを」、2013/5/24夕刊1面「マイナンバー法:成立 16年開始、漏えいに懸念」【産経】 2013/5/25朝刊「主張:マイナンバー成立 安全で便利な制度目指せ」【日経】 2013/5/24夕刊1面「マイナンバー法成立 税・年金を16年から一元管理」【共同】 2013/5/24「マイナンバー法成立 16年1月スタート」【東京】 2013/5/24夕刊1面「マイナンバー法成立 年金や納税を一元管理」

《注意報1》 2013/5/29 18:30

社会保障・税番号制度を導入するためのいわゆる「共通番号法」(*)が5月24日成立し、主要各紙が報じました。このうち、朝日新聞は25日付1面トップで「共通番号法成立、政府が一元管理」と見出しを掲げ、「所得や不動産など90項目以上の個人情報を行政機関が握る」ことになると報道。他紙も「共通番号制度は、国民一人ひとりに番号を割り振り、国や市町村などがバラバラに管理している社会保障や所得の情報をまとめて管理する制度」(読売新聞)、「国民一人一人に番号を割り振り、年金や納税の情報を一元的に管理するマイナンバー法」(毎日新聞)などと、政府・行政機関が国民の個人情報を一元的に管理する制度であるかのように報じました。

朝日新聞2013年5月25日付朝刊1面

朝日新聞2013年5月25日付朝刊1面

しかし、今回成立した共通番号法は、行政機関が法律で認められた範囲内で必要な限度で、個人情報を保有している各行政機関に情報を照会し、通知してもらう仕組みを前提とした法律になっています(法19条7号、21条2項、22条1項、別表第二など)。この法律をみれば、各行政機関が保有している個人情報を特定の機関に集約し、これを各行政機関が閲覧できる「一元管理」ではなく、従来どおり各個人情報は各行政機関が保有する「分散管理」を採用していることがわかります。

行政機関が他の行政機関が保有する個人情報を照会する際、その個人の情報をまとめて照会、収集することは例外なく禁じられています(法20条)。新たに「情報提供ネットワークシステム」が設置されますが(管理者は総務大臣、法21条)、行政機関間の情報提供を媒介するためのシステムで、個人情報が集約、記録されるシステムではないとのことです(当機構が内閣官房社会保障改革担当室に確認)。したがって、この制度導入後、いかなる行政機関も「個人情報をまとめて握る」あるいは「個人情報を一元的に管理する」ことは、違法行為となり、制度的に不可能といえます。

番号制度における個人情報の管理の方法について (内閣官房 2013/4/9)mynumber

甘利明・社会保障・税一体改革担当大臣も法案提出後の3月22日、衆議院本会議で、番号制度の構築は「一元管理」ではなく「分散管理」によって行われると明言。4月9日に公表された説明資料(上掲)も、「一元管理」ではなく「分散管理」であることを強調していました。所管の内閣官房社会保障改革担当室は、メディアの取材に「分散管理」を繰り返し説明していたものの、記事にしてもらえなかったとのことです。当機構が主要紙の記事を調べたところ、今回の法律が3月1日に国会に提出され審議入りした後、「分散管理」の仕組みに言及したものは一つもありませんでした。

また、朝日新聞の記事は、「共通番号制度法で行政機関が管理できる個人情報は93項目もある」と指摘していくつか例示した上で、「これらの個人情報はまとめて管理され、行政機関が必要に応じて使えるようになる」と報じています。しかし、すでに述べたとおり、行政機関は従来どおり個人情報を保有したままで、個人情報をまとめて管理できる行政機関が新たに設置されるわけではありません。「93項目」という数字についても、内閣官房社会保障改革担当室は当機構の取材に対し、「今回の法律で対象となる個人情報の項目の数を具体的に把握したことはないし、数え方にもよるのではないか。93項目と算定した根拠はわからない」と指摘しています。

なお、「別表第一」は全部で93項目ありますが、これは「行政機関が個人番号を利用できる事務の範囲」を列挙したもので、利用される個人情報の項目・種類を列挙したものではありません。各行政機関がどういう場合に他の行政機関から個人情報を照会・取得できるかは「別表第二」に定められており、個人情報の種類は「特定個人情報」欄に掲げられています。

共通番号法が成立社会保障と納税、一元管理 (Yomiuri Online 2013/5/24 12:47)

 国民全員に番号を割り振る共通番号制度関連法(マイナンバー法)は24日午後、参院本会議で自民、公明両党と民主党、日本維新の会、みんなの党などの賛成多数で可決、成立した。
 年金などの社会保障と納税を一つの個人番号で管理する制度が2016年1月から始まる。
 同法は昨年の衆院解散でいったん廃案になったが、その後、自民、公明、民主3党による修正を経て、今年3月に政府が関連法案を国会提出した。
 共通番号制度は、国民一人ひとりに番号を割り振り、国や市町村などがバラバラに管理している社会保障や所得の情報をまとめて管理する制度。「より公平な社会保障制度・税制の基盤になるとともに、行政の効率化に資する」(安倍首相)と期待されている。(以下、略)

甘利明大臣(社会保障・税一体改革担当)の国会答弁 (衆議院本会議 2013/3/22

「番号制度のシステム構築に当たっては、個人情報を一元管理するデータベースは構築せず、従来どおり、それぞれの機関で分散管理の上、番号法に基づき、必要な限度で機関間での情報の授受を行うことといたしております。」

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案 (衆議院)

「社会保障・税番号制度」のページ (内閣官房)

社会保障・税番号大綱 (政府・与党社会保障改革検討本部 2011/6/30)

(*) 正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」。
(**) 「分散管理」の手法は、2011年6月30日、当時の民主党政権(菅内閣)下で決定された「社会保障・税番号制度の大綱」ですでに打ち出されていたもので、当時の朝日新聞は「大綱」を報じた際「分散管理」に言及していました。当時の法案の骨格、仕組みは、今回成立した法律も変わっていないとのことです(内閣官房社会保障改革担当室に確認済)。

朝日新聞2011年7月1日付朝刊9面(左)では「大綱の骨子」を伝えたときは「分散管理」に言及していたが、2013年5月25日付朝刊1面の「法の骨子」には「分散管理」に言及がなかった。

朝日新聞2011年7月1日付朝刊9面(左)では「大綱の骨子」で「分散管理」に言及していたが、2013年5月25日付朝刊1面に掲載された「法律の骨子」(右)には言及がなかった。

(***) 主要メディアの中で比較的正確に報道していたのは時事通信で、「新制度は、年金や介護など社会保障給付と納税に関する情報を一つの番号で結び付けて把握する」と表現しています。