防衛相「信号弾で警告」 発言の事実なし

2013年1月18日注意報一覧メディア:, , ジャンル:, , テーマ:

【朝日】  2013/1/15「防衛相『領空侵犯、信号弾で警告』中国メディア質問に」 、2013/1/16朝刊4面「『領空侵犯続くなら信号射撃』防衛相、手順示し中国牽制」 【毎日】 2013/1/16朝刊「ファイル:領空侵犯機に警告射撃も」【産経】 2013/1/16朝刊5面「中国機領海侵犯、曳光弾で警告射撃も」

《注意報1》 2013/1/15 21:15

朝日新聞は、1月15日、ニュースサイトの無料版記事で、「防衛相『領空侵犯、信号弾で警告』中国メディア質問に」の見出しをつけ、小野寺五典防衛大臣が「無線での警告などに従わずに侵犯を続ければ、警告として信号弾を射撃する方針を明らかにした」と報じました。朝日の中国語版サイトでも、小野寺大臣がそのように表明した(中国語では「表示」)と報じています。

しかし、防衛省の会見録によると、小野寺大臣は「信号弾」や「警告射撃」という表現を一切使っておらず、特定の国や事案を想定した発言も行っていません。小野寺大臣の発言は、領空侵犯に対する従来の方針が変わっていないことを一般論として述べたものです。朝日の記事は、見出しにカギ括弧をつけていることから、小野寺大臣が中国側の領空侵犯事案に対し信号弾で警告射撃をする方針を明言したと誤解されるおそれがあります。

朝日新聞中国語版でもこの記事は配信されており、中国では日本の防衛大臣が尖閣問題で警告射撃に初めて言及したと大きく伝えられ、非常に大きな波紋を呼んでいます。

防衛相「領空侵犯、信号弾で警告」 中国メディア質問に(朝日新聞デジタル2013/1/15 12:57) ※2013/1/15午後10時掲載確認済(**)

防卫相:将发信号弹警告入侵飞机(朝日新聞中文版2013/1/15)

防衛大臣会見概要(2013年1月15日午前11時10分~)(防衛省)より一部抜粋

Q:日本側が、安倍総理が防衛大臣に対して、中国の飛行機がもしまた来た場合、警告射撃をするように検討して欲しいという報道がありました。この警告射撃というのは、具体的にどのようなことを防衛省の中で検討されているのでしょうか。

A:これは、具体的に内部で検討するというよりは、従前からどの国であっても、我が国の領空を侵犯するという場合には、防衛省内でしっかりこれに対処すると内容が定まっておりますので、特に今回の、例えば12月13日にあった中国の政府機による領空侵犯事案を特定するわけではなくて、今まで様々な事例であった領空侵犯事案、これにしっかり対応することは、従前から方針は変わっていないと思っています。

Q:つまり、中国の飛行機が日本のいわゆる領空に入ってきた場合、この警告射撃ということは、ありうるということでしょうか。

A:どこの国も、それぞれ自国の領空に他国の航空機が入って来て、さまざまな警告をした中でも退去しない、領空侵犯を行った場合、これはそれぞれの国がそれぞれの対応を取っておりますし、我が国としても、国際的な基準に合わせて間違いのない対応を備えていると思っています。

 

中国の主要ニュースサイト「新華網」トップページ(2013年1月16日午前3時の表示状況)。右肩2番目に「日本が中国機に警告射撃を初めて明確に表明」の見出しが載っていた。(赤で囲った部分)

朝日新聞デジタルの記事を引用したの中国サイトのニュース。

(*) 中国ニュースサイトの画像を追加しました。(2013/1/18 12:40)
(**) 朝日新聞デジタルの記事は、1月16日ごろに、見出しが「領空侵犯に信号射撃 対中国で防衛相方針」に上書き変更されています。


《注意報2》 2013/1/16 09:20

朝日新聞は1月16日付朝刊4面で、「『領空侵犯続くなら信号射撃』 手順示し中国牽制」という見出しをつけ、小野寺五典防衛大臣が記者会見で、「尖閣諸島周辺の領空で中国機が無線などによる警告を無視して領空侵犯を続けた場合、警告のため曳光弾で信号射撃をする方針を表明した」と報じました。しかし、小野寺大臣は「警告」「曳光弾」「信号射撃」といった言葉を一切使っていません。

朝日新聞2013年1月16日付朝刊4面

朝日の記事は1月15日午後から中国の主要サイトでトップ扱いで報じられています。たとえば、『環球時報』は、朝日の記事を引用する形で、小野寺大臣が香港メディアの記者の質問に対し「もし中国機が釣魚島の”日本領空”に侵入した場合は、警告に従わなければ、日本が中国機に対し曳光弾を発射して”警告射撃”を実施する」と回答したと報じています。

これに対し、小野寺大臣に質問した香港メディアの記者は、中国版ツイッター(微博)で「日本の防衛大臣は『曳光弾を発射して警告射撃する』とは答えてないし、『信号弾』や『警告射撃』といった言葉も使っていない」と指摘し、「環球の情報源は朝日であり、朝日の報道が間違っている」と書きこんでいます。

香港メディア記者の中国版ツイッター書込(2013年1月16日未明投稿)

(*) 「小野田大臣」という誤記が1カ所ありましたので訂正しました。(2013/1/16 19:30)


《注意報3》 2013/1/16 19:30

中国の主要メディアは、1月15日午後、朝日新聞の報道を引用する形で、日本の防衛相が中国機への警告射撃を初めて表明したと相次いで大きく報じました。しかし、16日午後になって、大手ニュースサイトの「人民網」(人民网)が「日本の防衛相は中国機への警告射撃を表明せず 日本のメディア報道に誤り」と題する詳細な検証記事を掲載。この中で、朝日の記事と防衛大臣会見録を比較検証し、朝日の記事は誤りであったと指摘しています。(*)

日本防卫相从未表态将对中国飞机警告射击 日媒相关报道系误传(人民网2013/1/16 17:00)

ところで、朝日新聞以外にも、産経新聞が16日付朝刊で、小野寺防衛大臣が「必要に応じて曳光弾での警告射撃を行う方針を明らかにした」と報じていたほか、毎日新聞も、「警告の一環として射撃を行う可能性に言及した」と報じていました。しかし、小野寺大臣は「曳光弾」や「警告射撃」には具体的に一切言及していません。産経と毎日の記事は、いずれも16日付朝刊の雑報(いわゆるベタ記事)として掲載されていたものです。

産経新聞2013年1月16日付朝刊6面

ファイル:領空侵犯機に警告射撃も−−小野寺防衛相(毎日jp2013/1/16)

(*) 人民網の記事に日本報道検証機構への言及がありますが、当機構は人民網の取材は受けていません。


《注意報4》 2013/1/18 12:40

小野寺五典防衛大臣は、1月16日の臨時会見で、自衛隊が中国機に警告射撃をする可能性があると伝えられたことについて記者に問われ、「記者会見で話したのは、領空侵犯を行った場合、国際的な基準に則って、我が国もしっかり対応するということに尽きる」「細かく外にお話する内容ではない」と答えています。記者側は「警告射撃」「曳光弾射撃」について繰り返し聞いていますが、小野寺大臣はそうした具体的措置については一切言及していません。

大臣臨時会見概要(2013年1月16日午後4時45分~)(防衛省)より一部抜粋

Q:空自のスクランブルに関連して、中国の方で自衛隊機が警告射撃をする可能性ということが伝えられまして、それに対して中国の一部軍関係者などから、「警告射撃をすることは開戦の一発である」ですとか、「反撃をすべきである」とか、大変過激な反応が出ておりますけれども、そういった反応を招いていることについて、大臣としてのご所感があればお聞かせ下さい。
A:私は昨日でしょうか、一昨日の記者会見の中でお話をしたのは、あくまでも領空侵犯を行った場合、国際的な基準に則って、我が国もしっかり対応するということですので、そのことに尽きるのだと思っています。
Q:国際的な基準に則った対応ということで、現状ですと領空侵犯機に対して、着陸ないし領空外への退去ということを求めて、それを向こうが従わなかった場合に、警告のための曳光弾射撃ですとか、そういったことが可能だというふうに大臣としてお考えでしょうか。
A:これは内部で、運用の中で、しっかり検討していくものだと思いますので、私どもとしては細かく外にお話する内容ではないのだと思っています。
Q:警告射撃に関連してなのですが、一部報道で、アメリカ政府の高官が、日本政府に対して警告射撃を自制するように求めたという報道が出ているのですが、これは何か大臣、事実関係を把握されていますか。
A:私がお話ししたのは、どの国もそうだと思いますが、領空侵犯が行われた場合、国際的な基準に従って対応するということですので、それに尽きるのだと思います。

米国で運営されている華人向けニュースサイト『多維新聞』は1月16日、「日本の防衛大臣が濡れ衣」(中国語で「日防衛相含冤」)と題する記事を掲載。防衛大臣が「警告射撃の方針を表明した」との朝日新聞などの報道を取り上げ、防衛大臣の発言を「曲解し、作り上げた」と指摘。1月9日に産経新聞が「警告射撃」に関する報道をして以来、日本政府は全く反応していないにもかかわらず、日中のメディアが日本の防衛大臣の発言を「拡大解釈」(中国語で「延伸解讀」)したことで、日中両国民の対立を扇動したとしています。

中日媒體“開戰” 日防衛相含冤(多维新闻2013/1/16 )